志田未来「下山メシ」(テレビ東京系) 新たな“グルメ女優”の誕生だ
なぜ山に登るのかと問われて、「そこに山があるからだ」と言ったのはイギリスの登山家であるジョージ・マロリーだ。
しかし、木ドラ24「下山メシ」(テレビ東京系)の主人公、フリーのイラストレーター・みねこ(志田未来)は違う。声を大にして「下山メシがあるから!」と断言する。下山メシとは、文字通り山を下りた後に味わう、おいしい料理を指す。
第1話で登ったのは奥多摩の御岳山。立ち寄ったのは、古里駅前の「はらしま食堂」だ。まずは生ビールを一杯。志田の飲みっぷりがいい。続いてメインの「あじフライ定食」に取りかかる。
ここからは一気に志田未来版「孤独のグルメ」だ。ただし井之頭五郎(松重豊)の〈心の声〉ほど冗舌ではない。あじフライにかぶりつき、「ああ、カロリーで疲れが癒やされていく」と言った後は、ひたすらもぐもぐ、サクサクと食べ続ける。
そして「やっぱり揚げ物の選択は間違ってなかった」と満足げにつぶやいたのは、何と2分後のことだ。ワンカット長回しのカメラを前に、セリフなしの食べる動作と顔の表情だけで、料理の味と下山メシの愉悦を表現してみせたのだ。
しかも見る側をまったく飽きさせないのは、少女時代の「女王の教室」(日本テレビ系)や「14才の母」(同)から現在まで培ってきた強靱な演技力のたまものといえる。新たな「グルメ女優」の誕生だ。