初監督映画で本物の拳銃をぶっ放した唐十郎
<1976年4月>
4月14日、毎日新聞の社会面に「ロケで実弾発射 唐十郎ら外国製短銃使って」という見出しが躍った。同12日午後4時すぎ、唐(当時36)が監督を務める映画「任侠外伝・玄海灘」の撮影で本物の拳銃が使われたというもの。本番前に唐が1発、主演した安藤昇(同49)が3発、ポリバケツやカモメを標的に試し撃ち。本番では、真鶴半島沖で安藤が海に映る満月に向かって実弾2発を撃った。
「毎日だけに唐側から情報がもたらされていた」と話すのは他紙の元社会部記者。系列のスポニチでも報道。また、記事が出た14日には「サンデー毎日」で作家の森敦との対談が行われ、唐は「弾着でやるとかの方法はあるんですけど、それだとどうも力が出ない。そこで拳銃を使った」と語っている。“弾着”とは火薬などを使って、弾が当たったように演出すること。何回かテストを繰り返したが、迫力が出なかったので本物を使うことにしたのだという。
報道によって事実を知った神奈川県警は15日に唐と安藤を銃砲刀剣等不法所持の疑いで逮捕。
「唐は逮捕を覚悟していたというか織り込み済みで、それ自体が映画の宣伝になると計算していたようです。初監督作品であり、入れ込みようは尋常ではなかった」(同)