夏井睦氏が語る「炭水化物が人類を滅ぼす」の根拠
カロリーという概念を間違えている
――炭水化物をやめて、お腹がすきませんかね。簡単にできるものなのですか。
先ほど説明したように、もともと炭水化物は体になくても大丈夫なのです。つまり、体がパンやご飯、お菓子を求めるのは単なる中毒症状・禁断症状なんですよ。血糖が下がるとイライラ感が生じ、これを解消するには血糖を上げるしかありません。しかし、血糖は摂取後2時間で下がります。この現象を空腹と勘違いして食べてしまうのです。
血糖を上げられる食物は炭水化物くらいですから、チキンやステーキをたくさん食べてもイライラは解消しない。で、また、炭水化物を食べてしまう。でも、最初から炭水化物を食べなければ血糖の上下がないので、空腹感やイライラ、疲れも感じません。私は最近、朝晩2食しか食べていません。おかずは一般的な成人男性の一回の摂取量で、ご飯を抜いただけです。糖質制限を一度経験すれば、炭水化物を食べた後、体が重く感じ、眠くなるし、二日酔いと同じような症状になりますよ。
――そもそも、先生はカロリーの概念そのものに疑問を呈していますね。
人間は何のために食べるか。3つの目的のためです。体の維持、体温の維持、そして活動のエネルギーです。人間の体には60兆個の細胞がありますが、1日1兆個の細胞が壊されては新たにつくられます。だからその分だけタンパク質と脂質が必要です。カロリーの概念を「暖房のための燃料」とイメージするとしたら、食物のタンパク質や脂質は体をつくる材料として、かなりの部分が消費される「建材」です。食べたものの多くは「建材」として使われている。動物は「建材」として食物を食べ、その一部を「燃料」として燃やしていますが、「食物=カロリー数」という考え方は「食べたものは燃料になる」というもので、「建材としての食物」を考慮していません。こうしたカロリーの概念は間違いです。
■マヨネーズも焼き肉も気にせず食べていい
――成人男子が一日に必要なのは何カロリーで、オーバーしたら運動せよ、というのも違うわけですか。
運動で痩せようと思ったら大変です。ある人の研究では、40代には週5回のハーフマラソンをしないと体形は維持できないそうです。60代になれば週2回のフルマラソンが必要とか。運動で痩せるというのは幻想に過ぎません。
――それじゃあ、やってみようかなあ。
サラリーマンは夜始めるのが一番楽ですよ。夕食を鍋にして締めの雑炊、うどんをやめてみる。お酒は日本酒、ビール以外なら焼酎やウイスキーは飲んでもいい。しかも二日酔いになりません。私自身この2年、二日酔いとは無縁です。食事も居酒屋メニューなら、何が入っているかすぐわかるから実践しやすい。後は、糖質の多い根菜類や果物、お菓子、ジュースを控えれば、マヨネーズも脂身も焼き肉も気にせず食べてください。タンパク質と脂肪は十分取ることがコツです。
(聞き手=本紙・小野真依子)
▽なつい・まこと 1957年、秋田県生まれ。東北大医学部卒業。練馬光が丘病院「傷の治療センター」長。湿潤療法の創始者。栄養素としての糖質の性質やカロリー概念など独自の考察や研究を行っている。著書「炭水化物が人類を滅ぼす」が20万部突破で話題に。