落語家 林家木久扇さん(77) 喉頭がん
処置室に入ると、「着衣を脱いでから放射線室に入るように」と言われ、全裸で出たら、看護師さんが驚いて。脱ぐのは上半身だけでよかったんです。まぁそのおかげで、看護師さんと仲良くなりましたけどね。
剣道の面のような白いマスクをつけて左右から20秒ずつ照射。これを月~金の5日やりました。治療時間は短いし、辛い物を控えるぐらいで食事も行動も制限はない。声は出なくなったけれど、副作用もありません。
ただ、この治療用機械の値段が10億円と聞いて、病気よりも治療費が心配になってね。アメリカだと治療費が870万円もかかるそうです。ありがたいことに日本の高齢者保険医療のおかげで、後期高齢者の私はお安く済みました。
2カ月後の8月15日にはがんが消滅。とはいえ、問題は声でした。半年後に出る人もいるけれど、声を失う場合もある。医師はがんの治療を目的にしているので、声の出る治療法はありません。
レギュラー番組の「笑点」(日本テレビ系)は9回も欠席という形になり、私のいない座布団が映るたび、だれかに席を取られるんじゃないかと不安でね。たとえ息子の木久蔵が代わったとしても、芸の上ではライバルですから喜べません。休んでる間も、生きていたことの証しを残しておかねばと、執筆、イラスト、半生インスタントパスタ「木久扇ナポリタン」の商品開発と、精力的に仕事をこなしました。