評論家 樋口恵子さん(82) 胸腹部大動脈瘤感染症
問題は麻酔が切れてから。呼吸器などを通すために喉に入れられた大きな管を抜く「抜管」は死ぬかと思った。切り開いた傷の長さは手術中でも一番長いそうで、術後1週間は死ぬか生きるかの痛みでした。
そこへ、鬼のリハビリです。ICUにいたのは8時間。すぐ自分の部屋に戻され、いきなり介護士が体重を量るから起きろと言う。その時はこんなに痛いのに鬼だと思いましたよ。私の入院した病院は中年男性患者が多く、社会復帰に重きを置いていたこともあり、リハビリがかなりハード。翌日からは、青竹でひっぱたかれんばかりにたたき起こされ、ナースステーション1周の歩きを1日3回。10日後にはリハビリルームでの自転車こぎも加わった。
その時は本当につらかったけれど、おかげで24日後の退院時は、なんとか自力で歩けるまでに。退院後は半年間介護保険の要支援1レベルの認定を受け、デイサービス型リハビリを週2回。肋骨はつながっていないようで、今でもゴロン、ボキンと音を立てますが、それでも動くことに問題なく、リハビリの重要性を実感しました。
病気を誘引したのは我が家の食生活。戦後のひもじさを経験しているせいで、夫婦して好きなものを好きなだけ食べるのが最上の趣味。1食に5皿も6皿も並べて食べるのが常で、バランスは良いけれど量は1・5倍。娘に注意されても「死んで持っていけるものは経験と食べた物だけだ」と言い返していました。