やはり侮るなかれ…風邪が招く“死に至る病気”
■糖尿病ケトアシドーシスで昏睡
実際、風邪をひいた人は何も食べなくても血糖値が上がる。これは糖尿病治療の常識だ。風邪の原因となるウイルスや細菌が本来、人のインスリン分泌能力を抑制したり、インスリンの効き目を抑える働きをするからだ。
「しかも、食事をしていない田中さんは血液中のブドウ糖を代謝してエネルギーを作ることができません。それをカバーするため、体は血液中のブドウ糖の代わりに体内の脂肪を代謝してエネルギーを作ろうとしますが、その際にできるケトン体が血液中に急激に増えて血液が酸性となります。その結果、田中さんは意識障害や昏睡状態を起こす糖尿病ケトアシドーシスを発症したのです」
田中さんの場合は、これに発熱や下痢による脱水症状が加わり、血液の濃度が高くなることで脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクもあったという。
糖尿病の飲み薬を飲んでいる人や糖尿病予備群の人も、一気に重度の糖尿病に進んでしまう。気をつけたい。
「人によっては1型糖尿病を発症することがあります。その原因はハッキリしませんが、免疫細胞が風邪のウイルスや細菌と間違えて、インスリンを作る膵臓の細胞を破壊するからだといわれています。また、市販の風邪薬の中にはインスリンの働きを強めたり、逆にその作用を弱めるものがあるので要注意です」