視力が低下すると「幻覚」が見える そのメカニズムと原因
「天井から人がのぞいている」――。目の見えない人がこう言って、天井を指さしたらどう思いますか? きっと、ウソを言っているか、頭がおかしくなった、と考えるのではないでしょうか。
しかし、目がまったく見えなくなった人や低視力の人の10人に1~4人程度は「幻覚」を見るといわれています。それが「シャルル・ボネ症候群」です。視力が低下した人が、そこにはない人物、動物、建物が見えるという症状です。白内障や加齢黄斑変性症などで視力が落ちた人などからの報告が多いようです。
その原因はハッキリしていませんが、人が物を見るシステムに原因があるといわれています。
人は目から送られてきた映像を脳が瞬時に判断できるよう、“これまで見てきた映像で補強する”というシステムがあります。視力が低下して見えなくなってもこのシステムが働いているために、実際にはそこにないはずのものが見えるというわけです。
それは幻覚というより夢ではないのか? そう思う人もおられるでしょう。しかし、本人に聞くと、「映画のように映像はハッキリしていてリアリティーがある。夢ではない」と言います。人によっては「大きな歯や目に追いかけられた」「歩いていた道がいくつもに枝分かれして道が迫ってきた」などと訴えます。