米ではヘディング禁止「子どもの脳震とう」の深刻リスク
都内の40代勤務医
米国のサッカー協会が脳震とう予防の観点から「10歳以下のヘディング禁止令を出した」とのニュースを覚えている人もおられると思います。私の友人たちはそれを聞いて「なんだ、大げさだな」「米国は過保護だ」なんてあきれていましたが、軽く考えるのは禁物です。実は、脳震とうの直後の影響と時間が経ってからの影響に注目した複数の研究から、子供は大人以上に強いダメージを受けることが分かっているからです。
■脳は想像以上に傷つきやすい
たとえば、脳震とうを起こした高校生が後に不眠症や集中力が途切れるようになり、「学習障害」「注意欠陥障害」と診断されるケースがいくつも報告されているのです。
脳は脳脊髄液という保護液に浮かぶ傷つきやすい器官です。ちょっとした衝撃なら脳脊髄液がクッションとなってダメージを受けない仕組みになっています。
ところが、頭部が激しく揺さぶられたり、強い衝撃を受けたりすると、脳は頭蓋骨の内壁にぶつかり、脳を構成する神経細胞(ニューロン)が傷つきます。むろん、「神経信号を伝えるニューロンの通信ケーブルである軸索の束」(白質)も引きちぎられます。