人工心肺を使わなければならない「2つのケース」
心臓に栄養や酸素を送る冠動脈に複数の狭窄があるなどして血流が悪くなっている場合、狭窄している血管に別の血管をつないで血液の迂回路を作る「冠動脈バイパス手術」が行われます。冠動脈は心臓の外側にあり、心臓の内部にメスを入れなくても済むため、私が執刀する手術では、できる限り心臓を動かしたまま行うオフポンプ手術を選択します。人工心肺を使うことによるデメリットをなくすためです。
■最大のリスク軽減策は手術時間を短くすること
しかし、それでも人工心肺を使わなければならない患者さんもいます。先日、冠動脈の6カ所をバイパス手術した患者さんも、心臓の状態が極めて悪く、人工心肺で補助しなければ手術に耐えられないケースでした。バイパスさえ作ってしまえば、血流が戻って心臓の機能は蘇ります。手術は無事に成功し、いまはすっかり元気に回復されています。
また、心臓の裏側にバイパスを作らなければならない手術の際も、人工心肺を使う必要がありました。心臓の裏側を処置するとなると、心臓をいったん持ち上げなければなりません。しかし、その患者さんは心臓の状態が悪く、肺うっ血が非常に強かったため、持ち上げると全身に血液を循環させることができなくなるリスクがありました。