予想以上に血管が石灰化していた高齢患者をその場の判断で対処
緊急手術というのは、術前に精密な検査を行えないまま手術を行うので、実際に手術をしている最中に「おや? こんな状態だったのか……」というケースに出くわす可能性が高くなります。「こんなところまで石灰化が進んでいるのか」とか「こんなところに血管があったのか」といったような想定外の状況に遭遇するのです。もちろん、その都度、対処しながら手術を進めなければなりません。
そのうえ、患者さんが高齢者となると、さらにリスクは跳ね上がります。高齢者は心臓以外にも腎臓などの重要臓器や全身状態が弱っているケースが多く、そのうえ緊急手術となると死亡率は予定手術の10倍ほどアップしてしまいます。そのため、どうやって手術を行うか迷ったり、予想外の状況に出くわしたときにどう対処して乗り切るかなど、外科医の経験や判断力がより重要になってくるのです。
中には、高齢なうえに栄養状態が悪いハイリスクな患者さんの緊急手術を安易に次々と実施している病院もあります。当然、成績は悪く、患者さんの死亡例が積み上げられています。あまりにも死亡率が高いため、外部から調査が入った病院もあるほどです。
多くの医師は、なんとか患者さんの命を助けたいと考えて緊急手術を行っています。心臓病だと診断されている患者さんは、もしもの場合に備えて救急搬送してもらう病院を決めておくことも自分の命を守る手だてと言えるでしょう。