卵巣がん<4>「生きるための出費がどんどん膨らんで」
「職探しで、がんの既往歴や時短勤務の希望を口にすると、まずオファーはありませんでした」
■「がんサバイバーの役にたつことが生きがい」
これからどのようにして生きていけばいいのか……方向性を失ってしまった。ひとりで部屋に閉じこもり、何日も家族と口を利かず、衝動的に窓ガラスを割ることもあったという。
2年ほど奈落の底をさまよっていた大塚さんが光明を見いだすのは、小さな勉強会に参加したときの、あるサバイバーの話がきっかけだった。
「物事には必ず両面があります。だから何かを表現するときは、良い面を見つけ出すことです」
良い面を見つける――。大塚さんは、こうした前向きな話を聞いて気持ちが和らいできたタイミングで、ドイツ旅行時に出合った「医療用ストッキング」を思い出した。医療用ストッキングを必要とする患者の大半が女性である。しかし、今の日本にはこの種の情報が少ない。医療目的なのに、サイズや使用感もないがしろにされてきた。