感染症対策には細菌やウイルスの「スクリーニング」が重要
次に要注意とされていたのがウイルス性肝炎です。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどへの感染により肝細胞が破壊される病気です。B型もC型も主に血液を介して感染しますが、こちらもいまは薬でコントロールできるようになりました。また、ウイルスの型には関係なく、内視鏡のように再利用する医療器具に対する効果的な消毒法がすでに確立されています。そのため、スクリーニングすることに以前ほど意味がなくなってきているといえるでしょう。
一時期はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)も注視されていました。感染すると免疫細胞が破壊され、最終的にAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こすウイルスです。主に性接触や血液を介して感染し、いまもHIVを保有している患者はいます。しかし、効果的な薬の開発によって免疫不全によるカリニ肺炎の発症をコントロールできるようになり、適正な薬の服用で一生発病しないことも可能になりました。
入院患者に対するHIVのスクリーニングは行っていて、感染している場合は守秘義務に従って本人だけには伝えます。ただ、本人が感染していても直ちに他の患者に迷惑がかかるわけではありませんし、社会的、道義的な面からも以前ほど神経質になったりするようなことはなくなっています。
感染症対策のために実施するスクリーニングはこうした経緯を経て、いまはMRSAとVREが重要視されているのです。