がん治療後に胃ろうを作ったことで仕事で活躍できるように
そして6カ月たった頃、Fさん本人から私宛てにこんな手紙が届いたのです。
「おかげさまで元気です。あの時、胃ろうを作るのに私の背中を押してくださって心から感謝いたします。私は若い頃、乳幼児の嚥下について研究をしたことがあります。今回の自分の体験は世に役立つかもしれませんので論文にしたいと思っております。完成しましたらお送りいたします」
その後、Fさんは胃ろうからの栄養に助けられながら診療を行ったり、専門の消化器内科診療での経験を論文で発表するなど活躍されました。
日本では、たとえば脳血管障害で意識がない方が病院から介護施設や自宅へ移る目的で、静脈栄養から胃ろうに切り替える例などが数多くあったようです。
その歯止めの意味もあってかどうか、2014年4月から胃ろうを作ることの診療報酬額が約60%に減りました。そこで、胃ろうを作ることをやめてしまった病院もあるように聞きます。
超高齢社会と増え続ける医療費が問題となっている今の日本では、「胃ろうと聞いただけで『良くない』」と考えられるような風潮になってしまったのでしょうか? 胃ろうで栄養を補給することで、Fさんのようにいろいろな仕事ができる方もいらっしゃいます。胃ろうを作るかどうか、診療報酬額で左右されることではなく、どのような場合に作るのかをしっかり検討すべきではないかと考えさせられました。