積極治療を望まない透析患者にも向き合って説明を重ねるべき
中には、透析を始めた後で急性心筋梗塞や脳出血を起こしたり、進行がんが見つかって手術などの本格的な治療が必要になった際、「透析でここまで生きてきたから、もう治療は結構です。手術が成功しても、また透析をしなければならないんでしょう?」と積極的治療を望まない患者さんもいます。
しかし、それでも医者としては、治療の重要性や有効性を手を替え品を替え説明するべきです。それも1人ではなく複数の医療者がそれぞれ患者さんと向き合い、きちんとした正しいエビデンスに基づいて見解を示す必要があります。それを大前提にしたうえで、自分の経験談を付け足しながら「手術で病気がよくなれば、これから透析も進歩するから負担が少なく暮らせますよ」といった説明をすると、思い直して積極的に治療を受けようという気持ちになる患者さんもいます。
偏った考え方の医師が患者さんに自分の考えを押し付けて透析の中断に誘導し、治療を受けて再び前を向くチャンスを奪っていたとしたら、医師の倫理観からも許されません。密室の中で医師がひとりで患者さんの命を決めてしまっているわけですから、糾弾されるのは当然です。