著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

体験した「エピソード記憶」の喪失を食い止める方法はある

公開日: 更新日:

 たとえば、「ハワイに行ったのを覚えているよね」という子どもの問いかけに「忘れた」と無表情の親が答え、「はじめての海外旅行のことも覚えていないのか……」と子どもは落胆する。似たような経験を持つ子ども世代は多いはずだ。このように親子が共有していた鮮烈な記憶でさえ、認知症の親の脳からは消えてなくなってしまうことがある。認知症にかぎらず、高齢の親には多かれ少なかれ認められる症状なのだが、こうした親の記憶の消失は、子どもにとってつらい。

 前回、新しく体験したことを覚えられない「記銘力障害」について述べたが、このように古い記憶がなくなってしまうのが「想起障害」である。中高年以上になって、上書きされる情報が多くなり、過去に覚えたことを思い出しにくくなることは当たり前のことではあるが、加齢現象の場合、その主たる原因は脳の海馬の機能低下である。

 心理学では、人間の記憶を2つに分けている。ひとつが「エピソード記憶」で、もうひとつが「意味記憶」である。「エピソード記憶」とは簡単に言えば、自分が体験したことの記憶である。たとえば「北海道に行ったことがある」「○○君とは中学の同級生」といった努力を要さず自然に定着した記憶であり、「意味記憶」は文字通り、数学の公式とか歴史的事件の年号、あるいは外国語など学習によって定着させた記憶である。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  2. 2

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  3. 3

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

  1. 6

    くすぶっていた木村拓哉&新垣結衣“身長差問題”は杞憂? 「教場0」で相まみえるシーン複数

  2. 7

    昭恵夫人が講演で“固まる”珍事…参加者に旧統一教会の政治団体会員、質疑で安倍元首相を礼賛

  3. 8

    大谷がいちいち「大袈裟に球を避ける」のは理由があった!弱点めぐる相手投手との暗闘の内幕

  4. 9

    11日開幕エビアン選手権でわかる? 渋野日向子「完全復活」の試金石

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」