精神科医が語る「自殺者が少ない地域」7カ所の共通点
森川医師はこれまで、徳島県の旧海部町(現・海陽町)、青森県の平舘村(現・外ケ浜町)と風間浦村、伊豆諸島の神津島、新潟県の粟島、北海道の白滝村(現・遠軽町)、広島県の下蒲刈島など7カ所の“自殺希少地域”を訪問。それぞれ1週間ほど宿泊し、地域の人たちと交流してきた。自殺希少地域とは「自殺で亡くなる人が少ない地域」であり、中には再度訪れたところもある。その経験から、森川医師は自殺希少地域に共通点があることを肌で感じたという。
「自殺希少地域というと、当初は“人と人が一生懸命に助け合っている地域”という印象がありましたが、実際に訪れると、そういうわけではない。まさに『人間関係は、疎で多』でした」
この「人間関係は、疎で多」とは、自殺希少地域の研究者である岡檀氏の言葉だ。森川医師は、岡氏の学会発表がきっかけで、自殺希少地域を訪れるようになった。岡氏の調査では、自殺希少地域では隣近所との付き合いを「緊密」と答える人は少なく、一方、自殺で亡くなる人の多い地域では「緊密」と答える人も多く4割だった。
「自殺希少地域では、緊密でない代わりに『常に相手は自分の理解を超えている存在』という考えが大前提にある。相手は自分と全く違う存在。だから“○○○なんだ”と決めつけずに、対話をする。7カ所の自殺希少地域で住民の方と交流する中で、それが強く感じた共通点でした」