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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

人の細胞や臓器を使ってもあくまで「基礎研究」に過ぎない

公開日: 更新日:

 試験管や動物実験での研究から人間を対象にした研究までは長い道のりですが、人間を対象にした研究も、基礎的な研究から、実際の実用に至る研究まで、同様に長い道のりが必要です。

 人間を対象にした研究といっても、人間の細胞を培養して試験管で研究というのは、人間の研究というより試験管を使った研究です。心臓とか肝臓などの臓器を取り出して行われる研究も、同様に人間を対象にした研究ではありません。人間の臓器を対象にした研究です。これらの研究は人間の一部を対象としていますが、人間以外の材料を使った研究と同じ仲間の研究と考えたほうがいいのです。試験管内の研究や人間以外の動物、または人間の細胞や臓器を対象にした研究は、実用化を目指す一連の中で重要なものに違いありませんが、あくまでそれは実用へ向かっていくための「基礎研究」に過ぎません。

 人間の研究と呼べるのは、あくまで、人間の細胞とか、臓器のレベルでなく、人全体を対象にして行われる研究です。こうした研究は「基礎研究」に対して「臨床研究」と呼ばれます。さらにはその「臨床研究」にもさまざまなレベルのものが存在し、そこにもまた長い道のりがあります。

 検査や薬などの、ある医療行為が実用化されるまでには、試験管や動物実験、さらには人間の細胞や臓器を使った「基礎研究」を経て、人間で実際に役立つ可能性が明確になったうえでようやく「臨床研究」として実用化へ向けての新たな歩みが始まるのです。

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