医者も忌み嫌う「死の現実」自分の身に起こると理解しない
「この時は『あなたはどこで死にたいですか』をテーマにしようと準備を進めていました。高校生にも死という現実と向き合ってもらいたかったからです。ところが『死を連想させる話は高校生に向かない』と校長先生に反対され、テーマを変えることを要求された。人は必ず死にます。それなのに今の日本では、死について思いを巡らすことを嫌う。死は、自分の身に起こることだと理解しようとしない。どこか他人事なのです」
生きていれば、いつかは老いて死ぬ。人間は不老不死の存在ではないのだ。まずはその現実を直視する。そして、自分や自分の家族にとって望ましい死とはどのようなものか、最期の時をどう過ごしたいか、死を迎えるときのことを想像してみる。
死を恐れずに理解することは、人間らしい死を迎えるために欠くことができない作業なのだ。
(取材・文/稲川美穂子)