病院への搬送がプラスに働いた98歳一人暮らしの元女優
自宅で最期を迎えようとしている高齢者に対し、病院に搬送して延命の措置を施すかどうかはケース・バイ・ケース。それぞれの望ましい形で人生を終えるためには、本人の意思や状態、家族の思い、そしてタイミングなど、総合的な判断が必要になる。
かつて女優をしていたという98歳の一人暮らしの患者は、病院への搬送がプラスに働いた。
「初めて自宅を訪問し診療した時は、きれいにお化粧をして、台湾で映画撮影した際に現地の要人から贈られたというチャイナドレスを身にまとって出迎えてくれました。部屋には女優の頃の華やかなブロマイドや写真がいくつも飾られていた。今ではセピア色となった古き良き記憶に囲まれて生きていたのです」
小堀さんは、本人と遠方に住む弟と話し合い、そのセピア色の世界で最期を迎えることで合意。患者の負担になる延命措置は施さないと決めていた。
その後はパーキンソン病を患っていたこともあって次第に歩くことが困難になり、転ぶ回数も増えていった。
食欲は減退し、配食サービスの食事も口にしない。衰弱している様子もうかがえる。最期はそう遠くないだろうと思われた。