麹菌はやさしい微生物 だからこそ人間の免疫力を強化する
神仏習合をなした日本古来の伝統思想とも通じる
欧州を原点とする微生物研究は、抗生物質を分泌する青カビの研究から始まった。青カビはペニシリンを分泌して“自分だけが生き残ろう”とする。つまり戦いに勝ちにいく菌だ。宗教問題や領土紛争で争いを続けてきた欧米にふさわしい。
一方、日本発祥の麹菌は、他者を攻撃しない「やさしい微生物」だという。それは神仏習合をなした日本古来の伝統思想とも通じる。
「攻撃しないどころか、自分自身を犠牲にして周りの有用微生物を活性化します。体に良いことで知られる乳酸菌も麹菌があると格段に元気になります。そして人間が食べると免疫力を強化してくれます」
排除するのではなく共生する――ウィズコロナが叫ばれている今こそ「麹に学ぶところがある」と山元は言うのだ。
日本で生まれ、幅広く利用されながら、実態がほとんど知られていない「麹」。本連載ではその秘めたパワーを、山元への取材により一つずつひもといてゆく。=つづく
(文・小茂根均/アウトサイドサイエンスライター)