解熱剤を使うと治りが遅くなるのか? 英国一流医学誌が報告
「熱は下げた方がいいのでしょうか、それとも悪いのでしょうか?」
クリニックの外来でもよく聞かれる質問のひとつです。人間の体はいろいろな場合に熱を出します。今の時期に熱が出る原因の多くは、新型コロナのような感染症と熱中症です。この2つの病気は同じように熱が出ますが、その原因はまったく違います。
熱中症は周囲の温度が上昇することで、体が熱せられてしまうことにより起こるので、熱を下げないと命に関わります。一方で新型コロナのような感染症では、体が病原体に対抗して炎症を起こし、それが熱の原因となるのです。
「この熱は体が必要だから出しているので下げてはいけない」という意見があります。たしかに、「熱が高い方が病気は早く治る」というような研究結果があるのですが、その一方で「熱が高いとそれだけ死亡のリスクが増加する」というような研究もあります。どちらが正しいのでしょうか? 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、これまでの臨床データをまとめて解析した論文が掲載されました。それによると、解熱剤などを使用して熱を下げても、下げなくても、特に病気の経過に変化はありませんでした。
解熱剤は無理に使う必要はありませんが、つらい時に一時的に使用しても、特に体に悪影響はないと考えていいようです。