お尻からヒモのようなものがニョロニョロと…生魚から感染、その正体は?
■サナダムシは体内で生息し続ける
水野院長は2019年にクリニックを開院したが、「予想以上の多さで最初は驚いた」と話すのが、日本海裂頭条虫、いわゆるサナダムシに感染した患者の相談だ。
「サナダムシはサケやマスの筋肉に潜む寄生虫で、アニサキスと同様に、サケやマスを生で食べることで感染する。アニサキスの場合、人間の体内では成虫にならないので、やがて死滅してしまう。ところがサナダムシは人間の体内で成虫になり、すみ続けます」
アニサキス症とは違い、サナダムシに感染しても多くは無症状だ。
「ただ、成虫となり生きているので、お尻から出てきたりする。また、虫体の一部が切れて便と一緒に排泄される。患者さんは『お尻からヒモのようなものが出てきた』『便にヒモのようなものが混ざっている』と驚いて、受診されます」
サナダムシは、錠剤プラジカンテルを1回服用すれば治療終了だ。
「ところが、この薬を常備している医療機関はまれで、さらに寄生虫を的確に診断できる医師が極めて少ない。患者さんの中には『(別の医療機関で)サナダムシの治療を受けたのに、またお尻から出てきた』と訴える方が少なからずいます」
「お尻」「便」というキーワードから「サナダムシ=消化器科」と思いがちだが、消化器科の医師がサナダムシ治療に詳しいとは限らない。
アニサキスは消化器科での治療となることが多いがサナダムシは感染症内科の受診をお勧めする。