「気象病」を防ぐには「胃をマネジメント」しよう
10月は台風が引き続いて発生しやすく、また朝晩の寒暖差が厳しくなるので、どうにも体調が悪くなる。ところが、病院で診察を受けても「特に異常は見当たらない」「あまり気にすることはない」などといわれるだけ。そんな人は意外とたくさんいるものだ。実はこれが最近しばしば耳にすることが多い「気象病」なのだ。梅雨と台風シーズンの今がピークと言われる「気象病」について、その原因やメカニズムについて調べてみた。
■秋も注意したい「気象病」
気象病とはその名の通り、気温・湿度・気圧という気象の状態を示す3つの要素の変化に伴って起こる心身の不良のこと。その主な症状としては頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、胃の痛み、抑うつ状態、倦怠感など人によって多岐にわたっているが、その中でも最も多いのが頭痛を訴えるケース。約8割の人に出て、しかも当人にとって一番辛い症状だというから始末に負えない。
6年前の2016年から自身のクリニックに気象病外来を設けている、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司院長は、
「ここ数年、私のクリニックの気象病外来を訪ねてくる患者さんの数が明らかに増えていますよ。地球温暖化の影響で異常気象が増え、気象の変化がより激しくなったこと、そして、メディアで気象病が紹介される機会が多くなって認知度が上がったことで、自分が気象病だと気づく方が増えたということもあると思いますね。いずれにしても、コロナ禍が依然として続くストレスいっぱいの今の世の中では今後も気象病に悩む患者さんはますます増えていくのではないでしょうか」
と不安を口にする。
気象病は今のところ特に症状が出ていない人でも、ある日突然、症状が出て苦しめられるようになることもある。油断のできない厄介な病気なのだ。
自律神経は、「胃」から整える
では、毎日の生活で気をつけていれば、気象病の発症を未然に防ぐことはできるのかといえば、近年の研究で気象病対策に役立ちそうな注目の事実が分かってきた。
というのは、気象病の患者には痛みや吐き気といった慢性的な胃の不調を感じている人も多く、胃の状態が気象病と関連していることが示唆されているからだ。久手堅院長はいう。
「胃と脳は密接に関連しており、それぞれの状態が影響を及ぼし合っていることが分かっています。これを『胃脳相関』と呼んでいますが、気象病においては胃の調子が悪くなると、体温や血圧などの機能を調整している自律神経の働きも悪くなると考えられています。ですから、気象病の症状を改善するためには胃の調子を整えることが有効な手段なのです」
■気象病のことをよく知って上手につき合う
気象病と付き合っていく上で大切なのは気象の変化に共生できる体作り。日頃の生活習慣を見直して自律神経を整えることが大切だという。そして、それには「耳のマッサージをする」「睡眠時間を調節する」「作業中はこまめな休憩を取る」といったことに加えて、
「胃に優しいといわれているヨーグルト、中でもLG21乳酸菌入りのヨーグルトには胃の不快感を軽減させ、自律神経を整える効果があることが分かっていますので、毎日続けて摂るようにするといいでしょうね」(久手堅院長)
この2年間、新型コロナウイルスの感染拡大によって室内にいる時間の増加や運動機会の減少で気象の変化に体が順応しづらくなっていることもあり、新たに気象病を発症する人が増えているという。
また、10月に入り日中は暖かいのに朝晩が冷え込み体調を崩している人も多いのではないだろうか。
メンタルに影響をきたすことの多い気象病は精神的なものと決めつけられてしまうことも少なくないが、気象の変化というはっきりとした原因のある心身の不調であり、生活習慣などに気をつければ万一かかっても症状を改善することができる。それだけに気象病のことをよく知って上手につき合っていきたいものだ。
▽久手堅司 2003年、東邦大学医学部卒後、東邦大附属医療センター大森病院などでの臨床経験を経て2013年せたがや内科・神経内科クリニックを開業。2016年に設けた「気象病・天気病外来」ではこれまで5000人を超える患者を診察している。最近の著書に「気象病ハンドブック」(誠文堂新光社)が出ている。