災害時における東洋医学の強み マッサージ施術が効果を発揮
内閣府によれば、1995年の阪神・淡路大震災では約31万人、2011年の東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県で約41万人、全国合計では約47万人が避難所生活を余儀なくされたといいます。
各避難所の閉鎖までの期間は、阪神・淡路大震災で平均6カ月、東日本大震災は岩手県で7カ月、宮城県で9カ月。原発事故に見舞われた福島県双葉町住民の埼玉県の避難先は、閉鎖まで2年9カ月要しています。
長期間にわたる避難所生活では、言うまでもなく、体調を崩しやすい。加えて、ライフラインが復旧するまでは医療機器の使用が従来通りにはいきませんから、診療すら困難になります。
しかしその一方で、医師の五感で症状を把握し、治療方針を決定できる東洋医学では、極めて有効に対処することができたといえます。
中でも効果を発揮したのが、被災直後における課題のひとつ、感冒や下痢などの感染症、そして低体温症の対処でした。
狭く身動きを取りづらい避難所生活では、慢性的な運動不足による血液の循環障害で血栓が形成されやすくなります。特に、高齢者では顕著。血栓が血流に乗って肺動脈に詰まれば、胸の痛み・呼吸困難・循環不全などをきたします。こういった、いわゆるエコノミークラス症候群には、東洋医学の知識に基づいたマッサージ施術が非常に効果的であったと報告されています。
そんな数々の避難所での経験を踏まえ、現在は国家資格を持つ鍼灸師・マッサージ師が、被災者及び支援者の方々へ鍼灸マッサージを提供する「災害鍼灸マッサージプロジェクト」が発足。各地の避難所における支援活動へと広がっているのです。