“診察待ち”で再会したかつての上長は3回目のがん手術を受けるという
そう言われれば、Fさんはたしか病院の建設だけではなく、人材集めや感染予防などのマニュアル作りにも積極的だった。隠れたすごい功労者だったなと思い出しました。ある新病院の設立にあたっては、院長候補としてある大学のM教授に白羽の矢が立った時、就任を説得されたひとりがFさんだったと、ずっと後になってから聞いたこともありました。
Fさんが診察室から出てくると、今度はSさんの呼び出し器が鳴りました。
Sさんの診察は15分ほどで終わり、診察室を出て会計に向かおうとしたところ、今度は知らない男性に呼び止められました。
「あなたは何時の予約でしたか?」
Sさんは予約票を見せながら、「11時30分でしたよ」と答えました。すると男性は、「そうか、自分は12時の予定で、いまは12時半。やっぱり1時間遅れているのかな。もう30分くらい待つのかな。ここの先生は熱心でありがたいけど、診察に時間がかかるからね」と口にしていました。
Sさんが会計のため受付に行くと、Fさんが手を上げて合図をしています。
FさんとSさんは、連れだって駅に向かう道の途中、昔、一緒に入った食堂で、昼食をとることにしました。店内に入ってみると、新装されていて以前の面影はまったくありません。マスク越しに思わず2人は笑ってしまいました。