誤嚥のリスクが多少あっても好きなものを食べさせてあげたい
息子さんから「母は食べることが大好き。好きなものを食べるだけで気分も明るくなるから、なるべく好きなものを食べさせてあげたい。今後の食事をどうしたらよいか」といった相談をいただきました。在宅医療では基本的に病状に差し障りがない限り、患者さんの食事に関してなんら制限はありません。ですがこの患者さんのように術後で腸の動きが弱まっていると、腸に負担をかけない食事が重要になるのです。とはいえ、この患者さんの場合、ご本人もリスクを承知で、好きなものを食べていつも通り暮らしたいという願望をお持ちでした。
「もし、このおかずなら大丈夫というものがあれば教えてほしいです」(息子さん)
「プリンみたいなものなら問題ないでしょう」(私)
「わかりました。そういうものを買ってみます」(息子さん)
「あと、母はカルピスが好きで毎日飲んでいるのですが、とろみをつけるとおいしくないと。普通の水は誤嚥の危険性はありますか? 少しでも気分を明るくさせたいんです」(息子さん)
「薄くとろみでもつけておいたほうがいいかなと思います。1口の量はスプーンですくって2㏄くらいで、1口につき、ごくん、ごくんと2回くらいに分けて飲んだ方がいいかと思います。もし大丈夫そうであれば、とろみを減らせるよう挑戦していきましょう。好きなものを食べられるだけで、生活の質はあがりますもんね」(私)
「いつもご丁寧にありがとうございます」(息子さん)
好きなものを食べられるだけで気持ちは前向きになります。息子さんの優しい思いに共感し、私たちも精いっぱい協力しようと励まされた気持ちになったのでした。