認知症の親が自傷行為を繰り返す…対処法はあるのか?
認知症になると、自分の顔や体を引っかいたり、ベッドの柵に手を打ち付けるといった「自傷行為」が見られるケースがあります。認知症には「こだわりの法則」があり、ひとつの事柄に集中するとそこから抜け出せず、周囲が説明や説得を試みたり否定したりするほど、こだわりが強まるのが特徴です。自傷行為は、こだわりの法則が現れる認知症初期~中期の時期に見られやすい。
ある80代の男性は、3年前に認知症を発症し、自宅で妻と息子の3人で暮らしていました。訪問診療に伺うと、壁やドア、ベッドの柵など、至るところに頭を強く打ち付けています。そのため頭にはいくつものキズができ、枕カバーやシーツには血が付着しています。認知症が進行すると痛みに鈍感になるとされ、「痛いから自傷行為をやめる」といった判断が難しい。ですが、目に見えるキズや出血があれば、家族の心配は増すばかりです。
そういった方に対して大切なのが「先手を打つ」ことです。普段、頭を打ち付けやすい壁やドアに保護マットを張ったり、ベッド柵にはカバーをかけ、頭を打ち付けてもキズができないように工夫しましょう。ベッドの形状によってはカバーが合わないケースもあるので、その際は毛布や座布団で代用してください。自傷行為そのものをやめさせられなくても、行為によって起こる問題を軽くすることはできるのです。