救いの手を差し伸べるのはなぜ「親」であるべきなのか?
親なしでのひきこもりの脱出や難治性の精神疾患からの回復は、親の意識改革と関わり方の望ましい変化で得られるほどの効果にはどうしても欠けることも多いのです。表面上の行動や症状は改善しても、ある種のほろ苦い不全感やさみしさがどこか残り続ける方も多く、親の傾聴・共感を通じて脱出・回復された方の多くに見られる本人と家族みんなが心から満たされるようなハッピーな感覚がどうしても得られにくい……そんなふうに、個人的に感じることが少なくないからです。
■親に理解され安心できれば、子どもには変化が現れる
私自身の経験から思うのは、不登校だろうが、ひきこもりだろうが、精神疾患であろうが、発達障害の不適応であろうが、まずファーストチョイスとして目指したいことはシンプルで、親によるわが子に対する傾聴・共感の実践に尽きると思います。ひきこもりや不登校の親御さんの多くが口を揃えていうのが「わが子が何を腹の底で考えているかわからない」という言葉であり、逆に多くの当事者の方からは「何度言っても親はわかってくれない」という言葉に見てとれるように、互いの掛け違いは大きいのです。そもそも本人のニーズが把握できなければ、どんなサポートも空振りになりかねず、効果的な支援のしようがないわけですから。