定期健康診断の結果を健康に生かす!
毎年この時期は年に一度の定期健康診断が行われる時。誰もがその結果に一喜一憂する時期でもあるが、それだけで終わってしまっては定期健康診断をやった意味はない。そこで今回は、どうすれば診断結果を日々の健康につなげることができるのか、専門家に聞いてみることにした。
■大切なのは数値の変動を見ること
厚生労働省がまとめた「定期健康診断結果報告」によると、定期健康診断で医師の所見が「異常なし」以外の「要精密検査」「要治療」となった人の、全受診者に対する割合は令和4年で5人に3人弱の58.3%。平成6年の34.6%と比較すると大幅に増えていることがうかがえ、ライフスタイルや食生活の変化などさまざまな要因によって何かしら健康面に問題を抱えている人が少なくないというのが現状のようだ。
では、診断結果をどのように生かしたらいいのか、公益財団法人結核予防会理事・総合健診推進センター長の宮崎滋先生に聞いてみた。
「皆さんは健康診断を毎年受けていると思いますが、その年の数値だけを見て判断するのではなく、以前よりも数値が上がっていないか、異常値がないかどうかなど数値の変化を見ることです。健診の場合は明らかに病的といえる異常値と正常値との間に要注意域という黄信号の部分がありますから、わずかな異常であってもその変化に注意することが大切ですね」
■全ての病気は肥満から
健康診断では肝機能や腎機能、尿酸値、血圧などさまざまな検査が行われ、それぞれの数値が知らされる。もちろんどれも見逃すことのできない大切な数値ではあるが、特に気をつけなくてはいけないものがあると宮崎先生は指摘する。それは「肥満」だ。
「実は脂質や血圧、血糖など全てに関わっているのが肥満なのです。特に中高年の男性に非常に多いのですが、内臓脂肪が増えたことによる肥満の場合、これを放置していると脳梗塞や心筋梗塞、肝臓がん、大腸がんなど多くの疾患を引き起こすことになりかねません。また、最近では認知症も男性の場合、中高年の肥満、特に内臓脂肪型肥満が中年の時期にあると認知症になりやすいという、そういう報告もあります」
さらに、肥満によって起こってくる血糖や脂質、血圧の値が高くなると動脈硬化の原因にもなることも明らかにされている。
また、「中高年男性が気になるものとして、肝臓の異常があります。肝臓の代謝異常があり放置すると肝臓がんに繋がることがあり放置は禁物です。さらに、生活の質を著しく下げるのは尿酸値。尿酸値8.0~9.0程度を5年間放置すると、痛風発作か腎結石のいずれかを起こすことが多く、どちらも痛みが酷いので避けたいところです。また、尿酸値が高い状態を放置すると腎機能の悪化に繋がるため、将来的な人工透析のリスクも懸念されます。尿酸値もBMIと密接に関係するため、やはり肥満に気を付ける必要があるでしょう。
肥満を放置している間に動脈硬化が起きてしまっては痩せても効果がないということになります。ですので、いずれにしても健康診断で肥満だといわれた方はできるだけ早く痩せること、それが大切ですね」(宮崎先生)
■腸内環境を整えて肥満を解消
肥満を解消する最も効果的な方法は食生活を見直すことだろう。今、多くの人は食生活が乱れがちだ。忙しいからといって朝食を抜き、その代わり昼夜はたくさん食べる。しかも、人によってはアルコールを多量に摂取する。さらにそれらに加えて運動不足の人も少なくないだろう。当然のことながらそんな生活を送っていれば、どうしたって肥満は避けられない。
そうした中、宮崎先生は近年、人々の腸内環境が悪化し、本来腸内で働いて私たちの健康を守ってくれるべき腸内細菌が
機能していないという。「腸内細菌には私たちが食べて消化しきれなかった繊維を分解したり、病気のもとになるものを防いでくれる働きがあります。よい腸内細菌をたくさん持つことはとても重要で、それによって腸内環境が整えば肥満も改善するともいわれています」
宮崎先生によると、腸内環境を整えるためにはヨーグルトや納豆などの発酵食品、腸内細菌のエサになるダイコンやニンジン、ゴボウなど繊維質の野菜、あるいはキノコ類や海藻類を積極的に摂取するべきだという。また、最近では体脂肪の蓄積を抑えることでお腹の脂肪を減らす機能性表示食品などもあり、そうしたものを積極的に摂るようにするのもよさそうだ。
最後に、宮崎先生からのアドバイスを。
「健康診断の結果が悪ければすぐに病院に行って精密検査をし、食事や運動など生活習慣改善のための指導を受けてください。症状が出ていないからといって放置してしまっている方も少なくありませんが、それは絶対にいけません。まずは専門医に適切な指導を受けること、それが何よりも大切ですね」