長寿研究のいまを知る(1)なぜ、人は老いて死ぬのか
100歳を越えて元気で長生きできる時代が現実になりつつある。2023年時点の100歳以上の日本人は9万2139人(88.6%が女性)。戦争の影響があったとはいえ、1970年の310人から297倍と急増している。
一方、2023年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.14歳である。江戸時代末期(1810~21年)の陸奥国(いまの岩手県)狐禅寺村の古文書から割り出された当時の平均寿命は男性40.7歳、女性は36.8歳。つまり約200年間で男性は40.39歳、女性は50.34歳延びたことになる。
では、最大寿命はどうか? 人類史上最も長生きしたとされているのは、1997年に老衰のため122歳164日で亡くなったとされるフランス人女性ジャンヌ・カルマンさんで、日本人では2022年に119歳107日で亡くなった田中カ子(たなか・かね)さんだといわれている。ちなみに200年前の狐禅寺村の最大寿命は96歳の女性とみられている。こちらは200年間に23年延びたことになる。
平均寿命とは、0歳における平均余命を示すが、日本の平均寿命が延びたのは、乳幼児期の死亡率が大幅に下がったからだ。実際、かつては「7歳までは神のうち」と言われるほど、低年齢層では食中毒などの感染症で亡くなる子供も多かった。とくに生後1年未満の死亡率は非常に高く、それが一昔前の平均寿命を大きく引き下げる原因だったが、2022年では1000人あたり1.8人と低く抑えられている。