海洋大の元人気講師が教える「サッパリ魚介料理」7選 暑さで衰えた食欲がみるみる回復!

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 暑くて食欲がない。でも、そんなときこそ食事を取らないと、暑さに体がまいってしまう。無理せず食べるには、どうするか。さっぱりとした魚介料理で一杯なんてどうだろう。

 ◇  ◇  ◇

「夏の魚介料理は、塩と酢で仕上げるのがコツです。悪魔のテイストといわれるのも納得で、落ちていた食欲がうそのように回復します」

 こう言うのは、東京海洋大海洋生命科学部の元非常勤講師の西潟正人氏(魚食文化論)だ。こってりとした肉料理は受け付けなくても、魚料理はいい。

 その西潟氏はこのほど「The肴 酒呑み魚を造れ」(KADOKAWA)を上梓。四季折々の旬の魚介料理全77種を写真とエッセーで詳しくつづっている。そこで西潟氏に、疲れた胃袋がシャキッとする夏の魚介料理を教えてもらった。

シンコは高い。自家製コノシロを遠慮なく

 夏に旬を迎えるシンコは、酢で締める魚の代表格だ。

 シンコ→コハダ→コノシロと成長するにつれて呼び名が変わる出世魚で、わずか3~4センチのシンコは寿司屋だと握り1カンに4匹つくことも珍しくはない。

 しかし、1キロ当たり数万円の値がつくこともあり、ウマくても高いのがネックだろう。

「10センチほどのコノシロの酢締めは自家製に限ります。理由は簡単。安いので、遠慮なくいくらでも食べられますから。ウロコを落として内臓を取り出したら、血の色が出なくなるまで水洗いをします。一気に三枚におろしたら、ザルに並べて塩を振って3時間、昆布を敷いた酢に漬けて3時間。水気をしっかりと拭き取ることが大切です」

 薄皮ははがさず、皮面に包丁を入れるといいという。

カツオといえば…腹下の酢締めを侮るな

 今年は、カツオが豊漁で、初ガツオでも戻りガツオのように脂がのっているといわれる。俗にスナズリと呼ばれる腹下の部分も、塩と酢で一変する。

「この部分は特に脂が強く、塩も酢もなかなか浸透しません。塩を振って半日ほど水分を抜いてから、酢で3時間ほど。脂がほどよく締まった一切れをほおばると、ウマみがいいあんばいにこなれてたまりません」

 カツオは、タタキも刺し身もウマい。でも、このスナズリの酢締めも侮れないのだ。

白身はすべてよし。マース煮でちむどんどん

 沖縄でマースとは、塩のことで、マース煮とは魚をまるごと塩で煮る沖縄の食べ方だ。

「マース煮は白身の魚ならタイでもアジでも何でもおいしい。大きめの鍋に魚が浸るくらいの水を張って、木綿豆腐と一緒に昆布を加えて水から煮る。魚のウマみがたっぷりとスープにしみ出してきたら、塩で味を調えながらひと煮立ちさせるのがポイント。より沖縄の雰囲気を感じたければ、独特の香りがあるアイゴがお勧めです」

 アイゴは、ヒレに毒トゲがある。調理前にハサミで毒トゲを切り取り、腹もハサミで慎重に切り開くと手間がない。内臓を傷つけないように塊ごとそっくり取り出し、水洗いすれば下ごしらえ完了。マース煮が完成したら、青ネギを散らし、すりショウガを添えると、ちむどんどんするはず。

スズキの腹には“宝物”が詰まっている

 秋に産卵するスズキは、腹の中に“宝物”が詰まっているという。

「腹を開いたら、背骨に張りつく浮袋をはがし取ります。浮袋はゼラチン質の塊で、胃袋と同様に開いて洗い、ぬめりや血管をしごき取ったら、皮や白子(精巣)と一緒に湯引きするといい。浮袋はポン酢で、湯引きした皮や白子、胃袋は刺し身に添えてワサビ醤油でいただくと至福の時間が待っています」

タコをヌタで。蛇腹キュウリと合わせて

 タコ料理は、あの独特の食感が醍醐味だ。それを最大限に生かす料理が吸盤のヌタだという。

「ヌタは高知の万能調味料で、味噌を砂糖と酢で伸ばした酢味噌のこと。カラシを加えてもいい。このヌタとタコが合うのです。吸盤だけをそぎ切り、夏野菜の定番キュウリを蛇腹に切って一緒に揉むと、夏のごちそうです。吸盤のコリコリとした歯ごたえと夏野菜の香りが吟醸酒によく合います」

 タコの身は、刺し身やタコ飯、タコ焼きにするといい。マグロやアジ、ホタルイカなども、ヌタに最適だという。

アワビもトコブシも。肝醤油で涼やかに

 豪華でありながらも、清涼感を呼ぶ一品がアワビでできる。

「アワビの水貝です。アワビをぶつ切りにして、トマトやキュウリ、ミョウガなどの夏野菜をたっぷりと氷水に盛りつけるだけです。秋に産卵期を迎えるアワビはこの時季の肝が最も大きい。開いてみて肝があったらしめたもの。肝をワサビ醤油に溶かし、肝醤油でいただくと、コクがあって涼しげ。箸が止まらなくなります」

 安くあげるなら、トコブシでもOKだ。

締めたヒイラギに味を加えるひと手間は?

 10センチほどのヒイラギは堤防や岩礁に群れるから、よく釣れる。関西ではよく食卓に上がる魚だ。それを塩と酢で締めたらもうひと手間加えると、ウマくなるという。

「ヒイラギのつぶしなますです。頭部と尾ビレや背ビレ、腹ビレを切り落としたら、ハラワタを抜いて水洗いします。ボウルに入れて粗塩で30分もんで締めたら、塩を洗い流して水気を拭いて、今度は酢で30分。実は、30分ずつ締めたくらいでは味がのらない。食べる前に皮と中骨がついた身を指でつぶすことで、細胞が破壊されて、魚のウマみと塩や酢が混然一体となるのです」

 骨がついた側の身を強くつぶし、もう一方はあまりつぶさない。この手加減が味わいを左右するという。アイゴやヒイラギは、関東では漁港周辺の魚屋で買える。

 ◇  ◇  ◇

 さあ、今夜の一品はどれにしますか?

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