日本を変えるのは国よりも地方から…「可燃ごみ60%減」福岡のある自治体の取り組み
お金や教育、家事などの身近なテーマから、政治や環境問題などグローバルなジャンルにおいて、「日本で非常識とされていること」が、実は「世界の常識であること」は意外と少なくありません。それを知れば、日本人の根底にある「価値観の選択肢」を増やすことにつながるはずです。
ドイツ在住の日本人実業家で、世界に精通する人気インスタグラマーが48例に及ぶ世界のシン常識をまとめた初の著書「シン・スタンダード」より一部抜粋、再構成してお届けします。
◼️世界の焼却炉の約3分の2が日本に
「大量生産→大量消費→大量廃棄」を繰り返してきた日本。これまで、この「大量廃棄」の受け皿は、この国ではとにかく燃やすことだった。そんな日本が抱える焼却炉は「1028基(ドイツ約50基)」。なんと世界の焼却炉の約3分の2は日本にあったこともあるという。もちろん国ごとに事情が違うという大前提はあるが。
そのとにかく燃やすことの「ツケ」は、次のような形で未来ある子どもたちに回されようとしている。
・石油などエネルギーを使用して燃やすことで、気候変動を進める
・燃やすために莫大なお金がかかる(僕たちの税金)
・有害物質の発生
「子どもたちの未来が危ない」と考えた福岡県大木町は2008年、当時の町長から次のような宣言を出した。
『もったいない宣言(ゼロ・ウェイスト宣言)』
そして、住民、事業所、行政が役割を分担し、「ゴミゼロ」を目指す循環型社会が作られ始めたのだ。
循環の仕組みはこうだ。
①各家庭に無料で生ゴミ専用の大きなバケツが配られる
②各家庭ではそのバケツに日々の生活で出る生ゴミを貯めていき、生ゴミの日(週2回)に出す
③集められた生ゴミは循環センターの専用の発酵槽で発酵され(37℃22日間)「液体肥料」と「ガス」になる
④液体肥料は地域の農地に散布される
⑤その農地でできた食べ物は地域の給食や食卓に並ぶ(地産地消)
⑥生ゴミが出て、②に戻り、循環
生ゴミが発酵する際に出るガスは発電に使われ、循環センターはその電気で運営されている。
ゴミの話をすると、「プラスチックゴミ」ばかりが注目されているが、家庭ごみの約6割は生ゴミだ。ちなみに、この取り組みの成果もあって大木町では可燃ゴミが60%減ったそう。処理費用は年間約3千万円減り、そのお金は地域に還元されているのだとか。
地域の農家さんも化学肥料を使う場合に比べ、費用が10分の1くらいに抑えられるとかで、今では日本全国だけでなく、世界中からひっきりなしに視察がくる町となった。当時の町長はこの取り組みを行うにあたり、ドイツに視察に行ってドイツの例を参考にしたそうだ。