和歌山市民図書館「有吉佐和子文庫」に「移民資料室」、自然光が降り注ぐ
南海電鉄和歌山市駅に隣接し、建物の1階にはカフェ、屋上に上がって左手に見えるのは紀ノ川、右手を見れば和歌山城が目にまぶしい――。まるで人気のデートスポットのようだが、れっきとした公立図書館だ。市民図書館本館の老朽化により、現在の地に2020年にグランドオープン。どのフロアも大きく窓をとっているため自然光が入り、明るく開放的なのが印象的だ。
「私たちが目指しているのは、市民の皆さんにとって居心地がよい場所であること。そのため座席数は650席、また椅子もソファ、木のぬくもりを感じるものなど、さまざまな座り心地の椅子とスペースを用意しています。1階ではビジネスマンが商談などで使っている姿も見かけますよ」(広報・前田奈都美さん)
蔵書数は52万冊。明るい茶色を基調とした床と本棚がしつらえられた2階には住まいと暮らし、ビジネスなど、生活に身近な実用書。また「和歌山ことはじめ」の棚を用意、和歌山の名所を紹介するパネルや観光、名産など資料が集められている。
3階は深い落ち着いた茶系でまとめられ、専門書の書架と、休日には満席になるほど人気の広々とした学習室を配置。学習室からは紀ノ川が一望でき、反対側にはテラスが隣接。リフレッシュにもってこいである。さらに4階「こどもとしょかん」では、階段一面に絵本が並べられた「えほんの山」が訪れた人々の目を引く。
国内公立図書館唯一の移民専門資料室
施設としての魅力もさることながら、ここの大きな特徴は、何といっても「有吉佐和子文庫」と「移民資料室」である。「有吉佐和子文庫」(2階)には、和歌山出身の作家・有吉氏の作品などが集められており、「これらは長女・玉青氏より寄贈されたもので、蔵書には実際に執筆に使われた貴重な資料などが含まれています。また有吉氏の作品をテーマとしてフェアも開催しています」(前田さん)。
「移民資料室」(3階)も見逃せない。国内公立図書館唯一の移民専門資料室で、移民に関する図書や雑誌、海外で発行された邦字新聞を所蔵している。
和歌山県は国内有数の移民送出県だったことから、その歴史を後世に残そうと開設された。
館内は蓋つきの飲み物は一部エリアを除き持ち込み可。1階のカフェのドリンクや、自宅から持参した飲み物を手にゆっくり読書を楽しむ――。本好きにはたまらない図書館だ。
●住所 和歌山県和歌山市屏風丁17番地(電073・432・0010)
●開館時間 9~21時(年中無休)
●アクセス 南海電鉄和歌山市駅降りてすぐ