根岸の超老舗「鍵屋」では女将さんが酒を一升瓶経由で徳利へ…ふと少年時代を思い出した
先代の遺言で「女性だけの入店はお断り」
カウンター奥の厨房では女将さんと賄いの女性がてきぱきと動き、順番に注文を聞いている。やがて女将さんがおしぼりとお通しの煮豆を持ってきてくれた。
そのタイミングでスーパードライの小瓶(700円)と冷奴(620円=写真)を注文。この冷奴が絶品。自家製の手作り豆腐は豆の風味が強く、あらためて豆腐は大豆で作られていることに気付かされる。
ビールで喉を潤しているうちに、店はほぼ満席に。
席から店内を見渡すと、鼻ピアスにレザー上下のパンクなお姉さんとロン毛のお兄さんたちの3人組に、若いカップルから普通の会社員風まで客層は種々雑多だ。どうやら老舗ではあっても決して“敷居の高い店”ではなさそうだ。でも、先代の遺言で「女性だけの入店はお断り」というルールがある。
いい感じに店内が温まり、気持ちのいいざわつき感が出てきたところで辛口の熱燗(700円)を注文する。
すると女将さんは一合枡に酒を注ぎ、きっちり量ってから漏斗で徳利に移している。そういえば昔の酒屋はこんなだったなぁと、子供の時分を思い出した次第。
そこに燗銅壺で燗した徳利がやって来た。女将さんがひと言、「正一合です。熱さはいかが?」「ちょうどいいね」。ここでウナギのくりから焼き(590円)を追加。居心地のいいカウンターの端でアタシは夢見心地で熱燗をすすっている。この時間が永遠に続いてくれればいいのに。口の中で香ばしくとろけるくりから焼きを味わいながらそんなことを夢想する。あ、お酒がカラだ。女将さん、熱いのもう一本お願い、辛口ね。
今年もこんな調子で飲んだくれます。変わらずのご愛顧、よろしくお願いします。(藤井優)
○鍵屋 台東区根岸3-6-23-18