「風俗を使ったら、心ごと妻から離れてしまうかもしれない…」。レスに耐える30代男たちの悲痛な叫び
“半径3m”でも聞こえ始めたレス議論
今やネット・メディアを通してそのワードを目にしない日はないというほどに深刻な、日本のレス問題。しかし当事者だという人でも、自分が「求める側」でないと意外と問題意識も芽生えず、まあいいか…と放置されがちな問題なのだ。
久しぶりに行われた忘年会・新年会などで、そんな「レス議論」を耳にした人もいるのではないだろうか。今悩んでいる人もそうでない人も、一生無縁で過ごすことも難しいであろうこの問題。私たち女性は、どう捉えていくべきなのだろうか。
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推しを心の拠りどころにする女性、そうではない男性
ところで30代も中盤にさしかかってくると、パートナーがいる人の中で、むしろレスではない人の数が異常に減ってきたような体感がある。まだ小さな子どもを育てている人は「そんな時間の余裕がない」というし、子育てしていない人でも「長く一緒にいると家族のようになってしまって」と口にする。
しかし、そういった人々も決して「男性断ち」しているわけでもなかったりする。女子会で女性用風俗やレディースコミックといったワードが出ると色めき立つし、性が関わることによってのみ満たされる「キュン」を渇望している人も多い。その気持ちを健全に発散するために、異性のアイドルやキャラクターに熱を上げて推し活を行う人も。
その一方で、同年代の男性で異性に対する推し活を行っている人は、筆者の周囲にはあまりいない。女性はいくつになってもキュンを欲しているというのに、男性はどうしているのだろう。そこで、周囲でパートナーとは「レス」に陥っているという30代の男性たちに話を聞いてみると、驚きの事実が見えてきたのだ。
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「離婚する勇気が出ない」から“女性断ち”するしかない
「逆にいいよな、女子は」。そうぼやいていたのは都内の外資系企業で働きながら副業も行い、サラリーマンとしては上位数%といえるであろう稼ぎがあるAさん。
Aさんは結婚5年目で、現在はパートナーと2人暮らし。彼女の希望もあって山手線の内側に高級マンションを購入し、そのローンの多くを彼が払っているという。レスになったのは結婚3年目の頃で、彼女の方から拒否されるようになったのがきっかけだという。
「お互い財布を分けていることもあって、彼女がいくら推し活に趣味費を投入したとしても、自分が口を出せるような状況ではない。仲が悪いわけではないし、休日は一緒にゴルフに行ったり旅行する時もある。
僕は彼女のことをまだ女性として意識しているけれど、相手がそうではないのだから仕方ない。じゃああなたも推し活すれば、なんて言われるけど、推し活の気軽さは男性と女性で大きく違うと思う」
かといって、外で発散することが許されているわけではないという。風俗を利用する程度であれば訴訟問題に発展する可能性は少ないが、彼は「行ってしまったら最後、心ごと浮ついて返って来れないかもしれないから」と、自主的に禁欲生活に近い暮らしを送っているそうだ。
欲求をコントロールする男たち
「たまに飲み会で女性が近くにいると、もういいかなと自暴自棄になりそうになることもある。相手に大きな魅力を感じていなくても、日常の抑圧を爆発させたくなってしまう。だけどまだ離婚する勇気が出ないし、会社関係で問題が起きたらマズイので、最近は飲み会も控えて、副業の仕事に時間を割いている」
30代半ばでたくさんのお金を稼いでいても、彼があまり幸せそうには見えなかったのが印象的だった。レスや不倫が大きな社会問題として報じられるようになり、昔のような気軽さがなくなっているのもあるのか、真面目な男性はレスを背負いつつも、欲求をコントロールしている。ある意味、涙ぐましい努力だ。
「旦那の愚痴垢」見つけてしまっても…
Aさんの友人でもあるBさんも、結婚2年目にしてレス状態だ。1歳の子どもを育てている状況ではあるが、パートナーからは触れ合いすら拒否されることもあるという。
「子育てが始まって、彼女が知らない人になってしまったように感じる。産後はホルモンバランスが変わるというし、覚悟していた部分もあったけれど、子育てのことでケンカも増えた。昔のように触れ合っての仲直りすらできず、気持ちの置きどころが分からない」
Bさんはそんな折に、彼女の“裏垢”を発見してしまったという。SNSで匿名のアカウントを使って、いわゆる旦那への愚痴を発散しているのを見てしまったのだ。
そんな深夜ドラマのはじまりのような出来事が、家庭の中でリアルに行われている。裏垢で発散しているパートナーと違い、Bさんは彼女との確執をまだ人に相談すらできていなかったという。それに、もしも自分が「言われている側」だったら…どんなにつらい思いをするだろうか。
真面目な人ほど大きな危機感を持っている
ネットやSNSでバズり、ドラマの題材になることでレスの話題はどんどん気軽で身近な存在になってきた。ある意味その甲斐もあって、真面目な人ほどレスから始まる浮気や不倫、そして離婚に対して大きな危機感を持っている。
誰もが「レス=離婚」という道を辿るわけではないが、レスは確実にパートナーとの絆に亀裂を生む。ろくな話し合いもせずに、なんとなく放置していい問題ではないのだ。
ネットでは今日も「不倫制裁」の動画がバズっている。動画の中では必ず、不倫した側が悪として描かれる。だけどそういった人にも、お互いの関係の変化から生まれる事情があるのかもしれない。浮気する側にも、された側にも、おのおのの事情があるのだ。
現代を生きる女性たちは今、色々な居場所を持つことができる。しかし、意外と男性の居場所は、昔と変わらず増えてはいないのかもしれないし、それどころか発散できる環境も限られてきているのかもしれない。2人の男性の話を聞いていると、そう考えざるをえないのであった。
(久留米あぽろ/ライター・コラムニスト)