<第8回>「一緒に世界選手権に出て!」佳菜子のひと言が何よりうれしかった
閉会式の2日前、選手村を歩きながら佳菜子にその思いを伝えました。すると、本人は驚いた様子でこう切り出したのです。
「私は絶対にイヤ! アッコちゃん、一緒に世界選手権に出て!」
佳菜子は以前から私が世界選手権を最後に引退することを知っていました。コーチは違うとはいえ、地元の愛知県を中心に何年も切磋琢磨しながらスケート人生を支え合ってきた仲間。だからこそ、「世界選手権は一緒に滑りたい」と話すのです。ただ、現実的な問題として、来年の日本人選手の出場枠が絡みます。
「私が出ると佳菜たちに負担がかかるよ」と諭すように言うと、本人は間髪入れずにこう言ってくれたのです。
「出場枠のことは大丈夫。佳菜と真央ちゃんが頑張るから。アッコちゃんは好きなように滑ればいいから。気にしないで」
うれしかった。私よりかなり年下(9歳)の佳菜子にそう言われるとは予想していなかったからです。こんな言葉をもらった私は、当然のことながら気持ちが揺れてきました。