GMも骨抜き…阪神の編成を牛耳る球団トップの“独裁体制”
13年オフ、ひとりの敏腕スカウトが退団した。関東地区を担当していたこのスカウトは、藪、井川、赤星、鳥谷らの獲得に尽力。25年の長きにわたり、阪神の編成を支えてきたベテランだった。
球団を去ることになったのは、11年ドラフトによる確執だった。阪神は同年ドラフトで慶大外野手の伊藤隼太を1位指名した。しかし、ベテランスカウトはドラフト前、「伊藤は2位でも取れます。1位はぜひ高橋周平(東海大甲府・内野手=現中日)でいきましょう」と上層部に進言した。
伊藤の1位指名は慶大OBである南信男球団社長(顔写真)の強い推しがあった。ベテランスカウトもそれは承知の上だったが、どの球団も打者としての評価は高橋の方がはるかに上だった。球団にプラスになると思い、あえて「高橋1位」を推した。それが南社長には面白くなかったのだろう。2年後、退団を余儀なくされた。
■主力に故障者ゼロなのに最下位
ライバル球団の関係者が言う。
「07年途中に球団社長に就任してから、南さんの独裁体制です。例えば、中日落合やDeNA高田というGMにトレードを申し込めば話が早い。補強に関する権限を持っているからです。でも、阪神の中村GMにトレードを申し込んでも即決できない。決定権がないから南社長に判断を仰がないといけないのでしょう。南体制になって大型補強を繰り返しても阪神は優勝がない。フロントの体制と無関係ではないと思う」