池谷幸雄氏が激白 塚原夫妻“権力の実態”と体操協会の暗部

公開日: 更新日:

 リオ五輪体操女子代表の宮川紗江(18)にパワハラを告発された塚原光男日本協会副会長(70)と塚原千恵子強化本部長(71)。徹底抗戦の構えを見せていたが、2日には一転、「全面降伏」とも取れる文書を発表し、「宮川紗江選手に対して直接謝罪をさせて頂ければ」と記した。一連の騒動を知り、体操界の改革を訴える1988年ソウル、92年バルセロナ五輪メダリストの池谷幸雄氏(47)に話を聞いた。

■反故にされた60歳定年

 ――体操界の中で、塚原夫妻はどんな存在なのか。

「女子の体操界の中では絶対的な現場のトップという感じですね。どういうふうにお金を使い、どういう強化をし、どういう合宿をするか。実質的に決めるのは強化本部長です。それを常務理事会が判断するのですが、全員の常務理事が詳しい内容を分かっているわけじゃない。なので、決定権はほぼ強化本部長になるといっても過言ではない」

 ――理事会はチェック機能の役割を果たしていない?

「予算も透明化されていないですから、何にいくらというのが細かく出てこない。その中で、塚原夫妻の影響力は(84年の)ロサンゼルス五輪のときからあり、このままではまずいという話は体操協会の中で出ていたんですけど、今まで誰が言ってもダメだった。そんな中、宮川選手が会見を開いてくれたことで、マスコミや世間の皆さんが知ってくれました。これまでも内部ではいろんな戦いがあったけど、すべて負けたり、葬られたり、抑えられたり、切られたりというのが続いていた。やっと表にさらされたという感じですね」

 ――1991年の全日本選手権では、出場17チーム55選手が競技をボイコットする前代未聞の事件があった。審判が、塚原夫妻が運営する朝日生命体操クラブの選手に不自然に高得点をつけた事件。そんな“経歴”がありながら、今も協会の中枢にいる。

「91年のボイコットがあっても、居続けている。周囲がみんな入れ替わっているのに、あの2人だけずっと。普通はあり得ないですよ。千恵子先生は71歳、光男先生はもう70歳です。現場を離れて世代交代していないといけないのに、それがいまだに代わっていない。時代遅れというか、日本体操女子が時代錯誤に陥っている。(光男)副会長が60歳になる頃、定年という形をとって幹部をリニューアルする話があった。それなのに、光男先生はもう70歳。あれ? っていう。なぜそこで代わらなかったのか、僕らに内情が知らされない。決定事項だけが表に出る。どうやって人選しているのか、要職の決め方自体、よく分からない」

 ――光男副会長はJOC(日本オリンピック委員会)の理事も務めている。

「宮川選手の訴えを『全部ウソ』と言っている人がJOCの役員ですよ。光男先生はどちらかというと陽気な人。軽く答えちゃったのかもしれないですが、あの状況であの立場で、あの言い方はない。事の重大性を認識できていない。『あんなんウソ、関係ない、ほっとけ』。普段からそういう感じで組織の中でやってきたと思われても仕方がない」

 ――選手の勇気ある告発を軽く捉えている。

「現役の、それも代表選手がこの時期に、なぜああいう会見をやらないといけないのか。選手を守らないといけない立場の人であり、本来はすごく責任を感じないといけない立場の人間。それを『全部ウソ』と言ったら、組織がどうなっているのかということになる。僕ら体操関係者は情けなくてしょうがない」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1
    男子バレー日本代表エース高橋藍の素顔 ネーションズリーグ無傷の8連勝を牽引

    男子バレー日本代表エース高橋藍の素顔 ネーションズリーグ無傷の8連勝を牽引

  2. 2
    「もっとも可能性があるのは200個メドレー瀬戸大也」レジェンド松田丈志氏が占う男子競泳メダルの数

    「もっとも可能性があるのは200個メドレー瀬戸大也」レジェンド松田丈志氏が占う男子競泳メダルの数

  3. 3
    池江璃花子は「まだ戻り切っていない。現時点で結果を求めるのは酷」レジェンド松田丈志氏が占う女子競泳

    池江璃花子は「まだ戻り切っていない。現時点で結果を求めるのは酷」レジェンド松田丈志氏が占う女子競泳

  4. 4
    「女子は今のタイムじゃメダルは厳しい。ゼロもあり得ると思う」レジェンド松田丈志氏が占う女子競泳

    「女子は今のタイムじゃメダルは厳しい。ゼロもあり得ると思う」レジェンド松田丈志氏が占う女子競泳

  5. 5
    立教大・上野裕一郎駅伝監督が電撃解任…女子部員との“禁断不倫”騒動で失う「名声」「仕事」「家庭」

    立教大・上野裕一郎駅伝監督が電撃解任…女子部員との“禁断不倫”騒動で失う「名声」「仕事」「家庭」

  1. 6
    女子レスリング53kg級「新・霊長類最強の女」藤波朱理は大舞台を制し“飲酒解禁”なるか

    女子レスリング53kg級「新・霊長類最強の女」藤波朱理は大舞台を制し“飲酒解禁”なるか

  2. 7
    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

  3. 8
    新生ラグビー日本に「ファンタジスタ山沢拓也」という希望 大敗イングランド戦で大歓声浴びる

    新生ラグビー日本に「ファンタジスタ山沢拓也」という希望 大敗イングランド戦で大歓声浴びる

  4. 9
    出雲駅伝でドーピング違反が判明…大学駅伝界に忍び寄る禁止薬物の影に「箱根」が呑まれる日

    出雲駅伝でドーピング違反が判明…大学駅伝界に忍び寄る禁止薬物の影に「箱根」が呑まれる日

  5. 10
    “スーパー中学生”ドルーリー朱瑛里に海外流出を危惧する声…弁護士を通じ異例の要請

    “スーパー中学生”ドルーリー朱瑛里に海外流出を危惧する声…弁護士を通じ異例の要請

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  3. 3
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 4
    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

  1. 6
    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

  4. 9
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 10
    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見