スポーツ医学の専門家に聞く“灼熱”東京五輪はどれだけ危険
――五輪期間中は警備も厳重。会場に入るには荷物チェック、ボディーチェックなどをしなければならず、炎天下で長蛇の列になりかねない。
「テントを張ったり、冷風機を導入するなどは組織委員会も考えています。ただ、課題もある。テントといっても、運動会で使うような仮設のものだと、熱がこもってしまう。日差しがないだけでもだいぶ違いますが、通気がないことには熱中症のリスクはある。理想を言えば、二重の屋根で空気のクッション構造があるテントならいいのですが、それを設置できるかどうか」
――と言いますと。
「五輪のように大勢の観客が集まる大会は、ほとんどありませんからね。立派なテントを導入しても、五輪以降にそれが必要になるかどうかは疑問。どうしても仮設にしなければいけないこともあるでしょう」
■従来の屋外競技場
――観戦中のリスクもある。
「その競技を見慣れている観客なら、熱中症対策の知識もあるでしょう。五輪を見に来る観客は、そうではないケースがほとんどです。それでも、五輪のために新設した競技場なら、熱中症対策も考えられているはず。屋内競技場も現在の日本の技術なら、エアコンが効かないなどの心配はないでしょう。問題は、従来からある屋外施設を利用する競技です」
――例えば、野球は横浜スタジアムで日中に試合がある。
「夏場のプロ野球はほとんどナイターですからね。普段、夏場の日中は使用しないが、五輪のために……という競技場は要注意かもしれません。もちろん、組織委員会も対策を立てていますが、何よりも観客自身が熱中症の知識を蓄え、対策を立てることが大事。炎天下の沿道でマラソンの応援をするのは、一番熱中症の危険性がある。そうしたことを我々やメディアもアナウンスし、啓発していかなければいけません」