引退で指導者へ 超天才型の阿部に必要なのは反面教師の目
巨人の阿部慎之助(40)が今季限りでの引退を表明した。
私が彼のプレーを初めて間近に見たのは、実はプロ入り前の1999年にまで遡る。シドニー五輪を翌年に控え、野球の日本代表選手がそれぞれ2月のプロ野球のキャンプに参加。強化策の一環で、中央大学の2年生だった阿部は代表最年少選手として、私が率いる横浜に派遣されてきた。当時はまだ19歳だった。
線は細かったが、フリー打撃をやらせると、その打球の速さと飛距離に驚かされた。その後の活躍は読者諸兄がご存じの通りである。
打撃は天才的。高めの速球を逆方向に飛ばす選手は珍しくなくとも、低めの変化球を左中間スタンドに放り込む技術とパワーを持った選手は、阿部の他にはそういない。打者としては、天才の上に「超」をつけなくてはいけない選手だった。
この超天才的な才能がしかし、指導者になったときには不安要素のひとつになる。スポーツ紙の報道によれば、阿部は来季からコーチとして原監督の下で帝王学を学んだうえで、近い将来、巨人の監督に就任するのが既定路線だという。私も「阿部巨人」を見てみたいとは思っているが、これだけの実績を残した選手が指導者になると、上から目線になりがちだ。天才ほど、なんでこんな簡単なことができないんだ、と選手目線に立てない。過去にそういうコーチがゴマンといた。気をつけなければいけない。