“尾身の反乱”腰砕けの完全降伏 五輪1万人案が招く感染爆発
「今の状況でやるというのは普通はない」――と、五輪開催に突っ走る菅政権を牽制していた、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長の“反乱”は結局、鎮圧されてしまったようだ。16日の分科会後に会見が行われ、どんな言葉が出てくるのか注目が集まったが、見せどころはゼロ。「やってる感」と「今さら感」が漂う会見に終わった。
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「ウィーシュ」
会見開始の直前、こう小さく気合を入れた尾身会長。分科会が政府に提言した「科学とICTを用いた対策」の説明から始めたが、肝心の中身は、感染状況を把握するための下水調査など、どれも聞いたことのある対策ばかり。1年以上もコロナ対策の最前線にいるはずなのに、今さら「科学技術をフルに活用する時代になってきた」と熱弁を振るっていた。
変異株の登場を踏まえ、行動変容を改めて訴えたものの、「鼻にフィットしたマスクの着用」「大声を避ける」など、こちらも目新しさは皆無だった。
中身スカスカの「提言」をよそに、記者の質問はイベントの人数制限に集中。7、8月のイベントを「最大1万人」とする政府案を分科会が認めたからだ。
現行の基準では、緊急事態宣言や重点措置の対象地域には「5000人または定員の50%以内の小さい方」、解除後は「5000人または50%の大きい方」を適用することになっている。ところが尾身会長は、人数を増やす「1万人案」をアッサリ了承。あれほど「(五輪を)やるなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と菅政権にクギを刺していたのに、観客を入れて五輪を開催したい政府に“敗北”した格好だ。
誰がどう見ても、政府案は五輪開催をにらんだ人数制限の緩和だが、尾身会長は会見で「五輪とは関係ないとの前提で了承した」の一点張り。五輪の観客数にも「1万人」を当てはめるかどうか聞かれても、「(五輪を開催した場合のリスクや対策をまとめた提言を)近日中に発表する」と繰り返すだけだった。
大会期間中の再宣言もあり得る
しかし、このまま政権の思惑通りに観客を入れて五輪を開催したら、感染拡大は避けられない。16日に開かれた厚労省のアドバイザリーボードで、国立感染症研究所や京大などの専門家チームが示した試算は衝撃的だ。
チームは今月20日の宣言解除、その後の人流増を想定し、9月までの都内の新規感染者数を推定。7月末から8月初旬に再発令に至るとハジき出した。インド株が猛威を振るった場合、再発令は7月初旬とも試算した。
厄介なのは、インド株の症状が分かりづらいことだ。英国の研究によると、その症状は従来株で見られた「咳・発熱」「味覚・嗅覚の喪失」とは違い、「頭痛」「のどの痛み」「鼻水」がメインだという。季節の変わり目によくある、軽い風邪や体調不良とほとんど同じだ。
五輪に「1万人」もの観客を入れて感染爆発なんてことになったら、尾身会長はどう責任を取るのか。