著者のコラム一覧
西牟田靖ジャーナリスト、ノンフィクション作家

1970年、大阪府生まれ。国境や家族などをテーマに執筆。著書に『ニッポンの国境』『本で床は抜けるのか』『わが子に会えない』など。

大阪工大高(当時)野上友一監督 昭和天皇が崩御で幻となったラグビー決勝戦【後編】

公開日: 更新日:

 それで、宿舎に帰ってきた後、選手たちを集めて声をかけたんです。あまりにも皆が暗い顔をして、負けたみたいな顔していたからね。

「おいお前らなぁ、優勝は優勝や。胸張って家帰れ。よし一回だけ万歳しよう。あんまりようけ万歳やったらアカンから一回だけやで。優勝おめでとう、万歳!!」

 全員で一回だけ「万歳!」をして、その日は「よし、解散」ということになりました。

 ちなみにそのときの「万歳」については当時、公表しませんでした。怒られますから。

 ーー怒られるというのは?

 街宣車が学校にやって来たんです。

「選手たちが不満げな顔をしていた。天皇崩御なのになんだ、あの態度は!」と言って、爆音で抗議されました。その他、ものすごい数の抗議の電話もありました。

 ーー実際、試合やってたらどうなったんでしょうね。

 当時は勝つと信じていました。だけど4年後の第72回大会(1992年~93年)の3回戦で茗渓学園とあたって、36ー27で負けています。中止されず実際、試合をやっていたら勝てたかどうか。今となってはわかりません。

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