大谷翔平の放出率は活躍するほど上昇の皮肉…エ軍も地元ファンも「トラウト最強」の見解
打って46本塁打、投げて9勝。かのベーブ・ルース以来の本格的な二刀流でMVPを獲得し、全米中から注目された昨季の大谷翔平(27=エンゼルス)。
今季もシーズンが始まる前から日米で脚光を浴びているものの、エンゼルスのお膝元である地元ファンの関心は「大谷よりトラウト」だという。
マイク・トラウト(30)とは、メジャー12年目の生え抜きで、通算打率.305、310本塁打、816打点。過去にMVPを3度獲得したスラッガーだ。
■「オオタニより信頼できる」
米メディア「The Athletic」がエンゼルスファンに向けたアンケートを行ったところ、チーム全体の人気調査ではトラウトが51.3%、大谷は28.9%にとどまったとか。2022年シーズンでチームへの貢献度がより高いのはどちらかという二者択一の質問では、トラウトが62.3%を記録したという。同メディアは「トラウトはおそらくオオタニよりも信頼できる打者だ。(外野)守備もうまい。そして人を引き付けるクラブハウスリーダーだ。球界で最も価値ある選手」とつづっている。
期待しても計算はしない
「エンゼルスのフロントも、たぶん同様の見方でしょう」と、特派員のひとりもこう続ける。
「トラウトは昨年、右ふくらはぎ痛で故障者リスト入り、自身ワーストの36試合にしか出ていません。けれども、トラウトは09年のドラフト1巡目指名で入団して以来、エンゼルス一筋。これまで11年間、メジャーで積み上げた実績がある。そこへいくと、大谷が爆発的な活躍をしたのは昨年の1年だけ。1年目は右肘のトミー・ジョン手術、2年目は左膝の手術を受け、3年目は右肘を痛めた。一昨年までは毎年のようにケガをし、投手としても野手としても周囲を納得させるだけの成績は残せなかった。昨年、どっちつかずの成績なら投手か野手どちらか、つまり二刀流を剥奪される危機だったのです。そこまで追い詰められ、危機感を抱いた結果が昨年のブレークですからね。フロントも期待はするでしょうけれども、大谷が今季以降も昨季同様の数字を残せるとソロバンをはじくことはしないはずです」
このまま順調にいけば、大谷はメジャー6年目となる来季中にFA権を取得する。エンゼルスはいまのうちに大谷と長期にわたる再契約を結ぶべきと提言する米メディアも中にはあるが、現時点でのトラウトと大谷に対する評価の差異が大谷の契約問題に影響するともっぱらだ。
エンゼルスはすでにトラウトと30年まで総額約490億円の12年契約を結んでいる。加えて中軸打者のレンドン(31)とも、19年オフに26年まで7年約279億円の大型契約を交わした。ともに年平均で40億円前後、エンゼルスは2人合わせて毎年80億円程度の給料を払い続けなければならないのだ。
■先発2人と交換
大谷がFA権を取得した場合、総額400億円程度の契約になるともいわれる。エンゼルスはトラウトとレンドンに年間80億円程度のカネを払って、なおかつ大谷と大型契約を結ぶだけの“体力”があるのか。スポーツライターの友成那智氏がこう言った。
「故障がちで戦力にならないレンドンは年俸の一部を負担してでも放出したいでしょうけど、はたして引き取り手があるかどうか。あくまでもレンドンのトレードがかなわなかった場合に、大谷を出す可能性はゼロではありません。メジャーではFA権を取得する前年のオフや、FA権を取得するシーズンの7月末に大物選手がトレードで動くケースも珍しくない。例えばヤンキースが相手なら大谷を放出、代わりに左腕のモンゴメリーと19年に18勝した右腕のヘルマンのローテーション投手2人を獲得できるかもしれません。エンゼルスはとにかく先発の整備が最優先事項ですから」
前出の「The Athletic」は「オオタニは世界で最も人気や知名度のある野球選手かもしれないが、エンゼルスファンから1番人気の座を奪うためにはかなりの努力が必要になる」と書いているものの、大谷が活躍すればするほど市場価値は高騰する。エンゼルスがますます抱えにくくなるのだから皮肉というしかない。