著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

労使対立の激化は米球界の終わりの始まり 動画配信の一般化で視聴者は奪い合いの状況

公開日: 更新日:

 何より、90年代後半はインターネットの普及と拡大の時期であり、球界にとっては他のスポーツのみが競争相手といってよかった。

 だが、2021年のワールドシリーズの平均視聴率(6.5%)と平均視聴者数(1174万人)はいずれも過去2番目に低く、6試合の合計視聴者数も約7045万人だった。

■動画配信サービスやオンラインゲームの一般化

 今年2月のスーパーボウルの視聴率(36.9%)と視聴者数(9918万人)はワールドシリーズをしのぐとはいえ、近年は数値が伸び悩んでいる。

「米国最大のスポーツイベント」とされるスーパーボウルでさえ動画配信サービスやオンラインゲームなどの一般化を受け、視聴者の奪い合いを余儀なくされている。こうした状況を見れば、大リーグを取り巻く環境は、今後厳しさを増すことはあっても、劇的な改善を期待することは難しい。

 それにもかかわらず、労使双方が譲歩と妥協を拒み、たとえ名目のみであっても中立的な立場を求められるコミッショナーが球団経営陣と一体化してMLBPAと対立し、結果として最大の「商品」である試合を予定通り行えないのが、現在の大リーグの状況である。

 人々の趣味が多様化し、しかも「コロナ禍」以降に米国社会の動揺が加速する中で、関係者が徹底した対立を止めないならどうなるか。球界そのものの将来は暗澹たるものとならざるを得ないのである。

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