日本ハム開幕戦は負けて満点!新庄劇場炸裂の波紋、唯一「欲」の出た采配を分析

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「我々古い人間からすると、全く意図がわからない。ひとまずは様子を見守りたいですが……」

 こう話すのは、2081安打の評論家・山崎裕之氏だ。

 25日のソフトバンク戦で初陣を迎えた日本ハム新庄剛志監督(50)。開幕戦はまさに「新庄劇場」満載だった。

■古株OB、ファンも混乱するBIGBOSS流非常識の常識

 敵地福岡にもかかわらず、試合前にド派手なセレモニーを行い、開幕投手にドラ8新人の中継ぎ右腕・北山亘基を抜擢。スタメンも1番今川に始まり、4番には昨季0本塁打2打点の松本剛を起用するなど、度肝を抜いた。

 新庄監督は「今年1年はトライアウト」と話し、このソフトバンク3連戦は「遊びます」と宣言。オープン戦さながらのメンバーで臨んだものの、ただでは転ばないのが今年の日本ハムだ。

 北山が2イニングを無失点に抑えると、三回からは加藤をマウンドに送った。加藤は昨季25試合で先発したローテ投手。てっきりロングリリーフかと思いきや、1イニングでお役御免にし、四回はプロ2年目で一軍登板未経験のリリーフ・根本に継投。五回からこれまた先発の伊藤に2イニングを任せたが、さらなる衝撃が走ったのは七回。なんと、マウンドに上がったのは翌26日の先発と発表されていた中継ぎ投手の堀である。

 この目まぐるしい継投策がソフトバンク打線を翻弄し、七回まで無失点。しかし、八回にこの回から登板した杉浦が満塁にされると、初めてイニング中に投手交代。西村に火消しを任せるも、ソフトバンクの新助っ人ガルビスに満塁弾を浴び、1-4で初陣を飾ることはできなかった。

 この日の新庄采配について、冒頭の山崎氏は、

■これまでの野球観では想像不可能

「中継ぎ新人の北山を開幕投手に立てたこともしかり、上沢と並ぶ二枚看板の伊藤の中継ぎ起用しかり、これまでの野球観からは想像もつかない。どんな意図、狙いなのか、戸惑いを抱く者もいるかと思います。やっていることが破天荒で、若い世代はともかく我々の世代からするとこの先が不安になってしまいます」

 と、目を白黒させた一方で、野球ファンの吉川潮氏(作家)は「見どころは多い試合でした」と、こう続ける。

「開幕投手の北山はもちろん、スタメンも6番の近藤以外、顔と名前が一致しない(苦笑い)。イースタンの試合のようなメンバーですよね。いくら今年1年間はテスト、とはいっても、どういう根拠でオーダーを組んだのかと思って試合を見ていたら、3番の石井が本塁打を打ち、4番の松本剛が2安打1盗塁したのには驚きました。七回までは新庄監督の思惑通りという試合展開でしたけど、さすがに1-0で勝てるほど甘くはなかった。それでも日本ハムとしては十分な試合をしたと思うし、ソフトバンクとしても面目を保ててよかったんじゃないでしょうか」

新庄監督の「勝ちたい!」欲が…

 もっとも非常識に見える采配の中にも、新庄監督なりの確かな根拠があると感じたと言うのは、日本ハムで2006~08年に守備・打撃コーチを務め、06年は「選手新庄」と共に戦った平野謙氏だ。

「6番にポイントゲッターの近藤を置いたところは、ちゃんとコーチ陣と話し合って決めたという印象です。近藤は右投手も左投手も苦にしない。これは巧打者の中村に6番を任せたソフトバンクも同じですね。投手でいえば、北山や根本ら若手には経験を積ませるのが目的でしょう。一方、加藤や伊藤といった実績のある投手を中継ぎで起用したのは、実戦でどれだけ投げられるか状態を把握するため。若手を積極起用したのは、今後を見据えて一軍の雰囲気を味わわせることを優先したのではないか。

 これは私の想像ですが、先発の北山がしっかり抑えた場合と、崩れた場合の2パターンの継投策を用意していたと思います。ただ、ひとつ言えば、初志貫徹じゃありませんが、八回は杉浦に1イニングを任せてほしかったですね。あそこは新庄監督の『勝ちたい!』という欲が、この試合で唯一出た采配だと思う。それまでの投手も全員ピンチを背負ったが、回の途中で継投はしなかった。八回は1点リードしていたこともあり、『このまま勝てるのでは?』と欲が出たのでしょう」

 奇策、妙策には新庄監督なりの「ジョーシキ」があるというのだ。

■先が読めない楽しみ

 前出の吉川氏が言う。

「CS放送で古参のうるさ型の評論家が『どうも新庄監督がやろうとしていることはわからない』とクビをひねっていたように、私も含めて60代、70代の世代からすると、常識を覆す宇宙人的なところがある。次のカードの本拠地開幕3連戦も含めて、誰が投げて、誰がスタメン起用されるのか、どんな采配をするのかが全く読めない。先が読めない楽しみがあると受け止めているファンは少なくないでしょう」 

 当の新庄監督は試合後、負けたにもかかわらず、ノリノリで報道陣の前に登場。スタメンについては「迷った。けっこう。4回くらい考え直したかな。でも、明日はまた違う子たちがスタメンでやってもらいたいなって思ってる。今日はある程度、ほとんど開幕戦でみんな出て、他のチームのドキドキしている選手よりかは今度は楽に戦えるんじゃないかなって」と、してやったり。

 目前で逃した初勝利について聞かれると、「まぁそりゃいつかは勝ちますよ。これ143敗だったらヤバいでしょ(笑い)。今日こんな注目カードという意味では選手たちもやりがいがあったでしょうし、楽しかったと思いますよ」と話した。

 試合は負けたが、内容に満足した向きも少なくないだろう。新庄劇場全開の開幕戦だった。

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