日本ハム新庄監督ついに本気モード! 交流戦でチームに勢い、勝ちに行く采配もズバズバ
29日の試合を制し、巨人に2勝1敗で勝ち越しを決めたのが新庄剛志監督(50)率いる日本ハムだ。初回に1点を先制するとその後も得点を重ね、終わってみれば7-2の圧勝だった。
3、4月は9勝19敗と散々な滑り出しだったが、5月はここまで12勝11敗と勝ち越し。チーム防御率が3、4月の4.15から3.06と、1点以上改善されたのも大きいが、交流戦では3勝3敗という成績以上に打線の奮起を含めてチームの勢いには目を見張るものがある。
将来性を見込んで清宮(23)、野村(21)、万波(22)を中軸で固定。ヤクルトとの交流戦初戦では、同点の延長十回2死満塁の場面、打席の宇佐見がカウント3-0になるも「待て」のサインを出さず、積極的にバットを振らせるなどして、選手の成長を促してきた。日頃から積極的に選手に声をかけてコミュニケーションを図り、25日のヤクルト戦前には浅間に手取り足取りで打撃を指導。稲葉GMやコーチ陣と連携し、選手の技術、意欲の向上を心掛けてきたことが、少しずつ実を結びつつある。
■叱った後のフォローを欠かさない
ムチも織り交ぜるようになった。ミスした選手に「バットを振らないと一生結果が出ない」「あんなミスしてたら一生上に上がっていけない」と喝を食らわせたり、「本人も、チームも引き締めるため」とスタメン落ち、懲罰交代もさせることで、危機感や競争意識をあおっている。
その一方で、叱った後のフォローを欠かさない。27日の巨人戦で平凡な右前打を後逸、打者走者の生還を許し、号泣して悔しがった万波を翌日のスタメンから外すも、同日、3-4で迎えた七回2死二塁と前日と同じピンチの場面で挽回を期待して右翼守備へ送り出したのは、最たるものだろう。
■犠打、エンドランの多用
采配面でも勝ちに行く作戦が目立ち、それがズバズバとハマっている。
一つがバントの多用だ。交流戦までの45試合でチームの犠打数は24。1試合あたり0.53個だったが、交流戦は6試合ですでに4個。巨人戦では3試合連続で犠打を決め、そのすべてが得点に結びついた。27日の巨人戦では、ローカル放送で解説をしていた清原和博氏が「こういう形は見たことがない」と驚いた、1死三塁からエンドランを仕掛けて得点。この日の四回無死一、二塁では宇佐見が一塁線へセーフティーバントを仕掛け、内野安打とすると、直後に3本の適時打が飛び出し、大量4得点を挙げた。時に手堅く、時に相手の意表を突いて得点につなげている。
「新庄監督は優勝は目指さないと言っているが、勝ちたい気持ちは絶対にあるはず。ここにきて選手の見極めが進み、個々の選手の能力を把握。犠打やエンドランなど、場面ごとに成功率を考えながら作戦を出すようになった印象です。勝ちに行くなら当然、ただ打つだけでなく、小技や足技も必要ですからね」(評論家・山崎裕之氏)
ファンあってのプロ野球
徐々に本気モードに突入しつつある新庄監督に関しては、試合後の言動に対して好意的な声が少なくない。
28日の巨人戦は敗れたものの、昨季途中まで日本ハムに在籍していた中田が本塁打を含む3打点の活躍を見せたことについて、「凄かったね。みんなが笑顔になれたと思う」と賛辞。負けた際に相手を褒め称えることが多く、ネット上でも、「野球が好きで、愛している」「プロ野球をよくしていきたいという思いが伝わる」などと総じて高評価を得ている。
かねてファンサービスに力を入れている新庄監督はこの日の試合前、インスタライブを公開。杉谷のスタメン起用を求める声に応えて「9番・二塁」に抜擢すると、四回に適時打を放つなど、2打点と活躍してファンを沸かせた。
「コロナ禍で『ファンあってのプロ野球』を痛感している球団は多い」とは、ある球団関係者。
「今季は日本ハムを除く11球団が開幕から観客制限を撤廃しているものの、主催試合の観客数はコロナ前の2019年と比べて1試合平均で1万人以上減っている球団もある。日本ハムはこの巨人3連戦、今季初めて入場制限を解除。金曜日こそ1万7382人も、土曜日は今季最多の2万7235人を動員した。神宮で行われたヤクルト戦も平日開催にもかかわらず、3試合連続で2万人超といつも以上にお客さんが詰めかけるなど、新庄効果が表れたとみていい。若くて将来性がある清宮、野村、万波の中軸トリオは見どころ十分だし、チームは発展途上で決して強くなくとも、必死で相手に食らいつくチームに魅力を感じるファンが増えてきたのでしょう」
新庄監督は「プロ野球を変える」と豪語している。新庄流がプロ野球界に好影響を及ぼしつつある中、他球団もマネできることはマネした方がいい。