大谷翔平は「個人のイチロー」から「勝利の松井秀喜」へ…思考変化に潜む落とし穴

公開日: 更新日:

WBCでは勝利にこだわりMVP

 もちろん、それまでも勝ちたい意欲は強いに決まっているが、二刀流で結果を出すようになったことで、これまで以上に強く勝利を欲するようになった。

 その象徴が今回のWBCだ。打ってはチャンスをつくり、ベース上ではオレに続けとばかりに派手なパフォーマンス。投げては打者を打ち取って咆哮した。チームが勝利を重ねるごとに、勝つ喜びや楽しさを実感。優勝の瞬間はマウンド上で感極まって、持っていたグラブと帽子を思い切り放り投げた。マスコミ関係者がこう言う。

「極め付きは準々決勝(イタリア戦)のセーフティーバントと、決勝(米国戦)のリリーフ登板ですよ。イタリア戦では両チーム無得点の三回に、ガラ空きの三塁線に転がして先制点を呼び込んだ。試合後の会見では『日本の勝利より優先する自分のプライドはなかった』と言い切りました。米国戦のリリーフは本人の志願です。準決勝以降は本来、投げない方針がエンゼルスと日本の首脳陣の間で確認されていた。けれども、大谷本人がエンゼルスのミナシアンGMに登板を直訴して実現した。大谷がフォア・ザ・チームに徹してここまでやるのは珍しいことです」

 セーフティーバントも、1イニングの抑えも、勝利のためなら何でもやるという自己犠牲の精神の表れ。何よりチームの勝利を目指したことで、日本代表は3大会ぶりに優勝。結果として自身もMVPを獲得した。

 この大谷のスタンスはイチローよりむしろ、松井秀喜(ヤンキースGM特別アドバイザー)に近いものがある。

 松井は常に、何よりも勝利優先。「4打数ノーヒットでもチームが勝つ方を選ぶし、4安打してもチームが負ければ悔しい」という。ヤンキース1年目、本拠地デビュー戦で満塁本塁打を放ったのも、「最低でも外野フライと考えた結果」だそうだ。「(ファンやメディアが注目して常勝を義務付けられるヤンキースのような)厳しい環境で、勝利のためにプレーする方が、(自身の)結果も付いてくると思う」と言ったこともある。

 イチローと松井、どちらも勝ちたいのは事実として、そこに臨むスタンスは対照的。勝利のためにバントやリリーフまでやった大谷の思考はある意味、松井タイプにモデルチェンジしたのではないか。

 4日現在、エンゼルスは開幕から3勝1敗。WBCが終わってチームに合流した大谷も「久々にみんなの顔を見て、このチームで優勝したいという気持ちになった」と話し、開幕投手として6回零封、打っては打率.294、2本塁打、5打点と好調だ。

 大谷は勝つために自己犠牲もいとわなくなっただけに、チームが好調なときは良くても、つまずいたときにどう影響を受けるのか。WBCで勝つ味を覚えた直後だけに、不安と言えば不安だ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸300億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」