著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

プーチン大統領がパリ大会後に“独自世界規模大会開催”の絵空事…愛憎相半ばする五輪への思い

公開日: 更新日:

■1984年ロス五輪時にも…

 思い起こせば、80年モスクワ五輪ボイコットの報復として、84年ロス五輪への参加を拒否したソ連など社会主義国9カ国が開催したのも「フレンドシップゲームズ」と呼ばれた。ロス五輪と同時期の分散開催であったので約50カ国の参加で終わったが、今回はパリ五輪後にロシア1国で開催し、もっと多くの参加国を狙っている。各国五輪委員会などのスポーツルートは使えないため、政府代表を派遣するなど集中的な外交攻勢をしているという。

 しかし、プーチンの理想とする五輪をひもといていくと結局、政治的につながれる国家とのスポーツ親善大会を行うことになる。彼にとってスポーツは国家のものであり、国と国とが競い合うものだ。この発想である限り、スポーツで平和を築くという五輪理念は絵空事となる。

 オリンピック憲章では「オリンピック競技大会は、選手間の競争であり、国家間の競争ではない」。政治的に仲の良い国同士で競争したところで、生まれるものは日常的な幸福でしかないのではないか。思想も政治体制も経済的格差も宗教も違うもの同士が、スポーツという共通のルールの下に競い合うために集うからこそ、競争が「違いを超える」というムーブメントになり、それが友好親善につながる。それ故に国家が、その未来の親交を担う自国の選手を育てる土壌として意味を持つ。オリンピズムの肯定できるナショナリズムの唯一のあり方である。

 IOCは「スポーツの政治化」に警鐘を鳴らすが、このオリンピズムの機微を理解しないプーチンのフレンドシップゲームズは五輪を凌駕できない。そして、プーチンの五輪へのアンビバレンスも癒えないだろう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷に懸念される「エポックメーキングの反動」…イチロー、カブレラもポストシーズンで苦しんだ

  2. 2

    阿部巨人V奪還を手繰り寄せる“陰の仕事人” ファームで投手を「魔改造」、エース戸郷も菅野も心酔中

  3. 3

    阪神岡田監督の焦りを盟友・掛布雅之氏がズバリ指摘…状態上がらぬ佐藤輝、大山、ゲラを呼び戻し

  4. 4

    吉村知事の肝いり「空飛ぶクルマ」商用運航“完全消滅”…大阪万博いよいよ見どころなし

  5. 5

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  2. 7

    大谷ファンの審判は数多い あいさつ欠かさず、塁上での談笑や握手で懐柔されている

  3. 8

    小泉進次郎の“麻生詣で”にSNSでは落胆の声が急拡散…「古い自民党と決別する」はどうなった?

  4. 9

    ドジャース地区連覇なら大谷は「強制休養」の可能性…個人記録より“チーム世界一”が最優先

  5. 10

    ドジャース地区V逸なら大谷が“戦犯”扱いに…「50-50」達成の裏で気になるデータ