「大関の消えた夏」須藤靖貴著

公開日: 更新日:

■黒人大関暗殺未遂事件の謎を解く斬新かつ独創的な相撲ミステリー

 大相撲初の黒人大関・荒把米(あらばま)。アメフトで培われた資質に加え、独自の合理的な稽古が功を奏し、入門9年で大関に昇進。その後も活躍はめざましく、横綱昇進確実かと思われたが見送られてしまう。黒人を横綱にしたくないという勢力からさまざまな形でバッシングを受けていたのだ。

 それでも初場所、春場所で優勝、準優勝を果たし、今度こそと臨んだ夏場所だが、途中格下相手にまさかの連敗。すると場所中にもかかわらず元兄弟子の経営する秩父のラーメン屋に逃亡。記者会見を開いた荒把米は賭博に関するある不正が行われているとの爆弾発言をする。その2日後、荒把米がライフルで狙撃されてしまう。危うく命を取り留めた大関は急きょ東京へ戻り、ラーメン屋で働く壮一郎の力を借りて犯人を捜す――。

 大関暗殺未遂の謎を追いながら相撲界の暗部をあぶり出すという主旋律に対して、旧態依然の体質を逆手にとって奇抜な計画を仕掛ける荒把米のしたたかさが副旋律として描かれていく。2つの旋律が錯綜しながら最後思わぬ結末へと至る、斬新かつ独創的な相撲ミステリー。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」