「男性権力の神話」ワレン・ファレル著、久米泰介訳
「女性専用車両」や「レディースデー」など、女性への優遇ばかりがあふれる昨今。女性の権利を拡張しようとするフェミニズムの台頭で、先進国ではあらゆる女性差別が糾弾されてきたが、一方で男性差別が増長してはいないだろうか。
ワレン・ファレル著、久米泰介訳「男性権力の神話」(作品社 2300円)は、全米で30万部を記録したベストセラーの待望の邦訳。男性に対する性差別の実態を、余すところなく明らかにしている。実は著者はもとはフェミニストで、女性の社会進出を助ける活動に関わっていた。しかし、男性差別の存在やその根深さに気づき、男性差別問題を追究する“男性学”の研究者となったそうだ。
例えば、司法における男性差別。本書では、女性だけに有利に働くバイアス(偏り)が多く、男性にはそれがほとんどないと述べている。まず、PMS(月経前症候群)のバイアスだ。1970年代、ある医師が「生理中や更年期の女性ホルモンが女性の意思決定に有害な影響を与える」と発表したとき、フェミニストたちは男尊女卑であるとして猛烈なバッシングを行った。